She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第43章 花に蝶
(なんっだ、アイツッ)
ちょっとテニスが上手いからって、跡部と仲いいからってっ!と肩を怒らせて歩く。
嫌味を言った忍足を咎めたいのか、新入生に1回戦負けした自分の傷に塩を塗りたいのかわからない真珠の発言に、イライラする。
「げ」
各々、木陰や部室で昼休憩を取っている部員たち。
部室からほど近い木陰を陣取っている跡部をはじめとした高等部ルーキーたちの姿に、顔を顰める。
近づかないでおこう、と踵を返した時、あのっ!と声をかけられる。
「テニス部、ですよね?」
振り返った先には、中等部の制服を着た女子生徒が数人。
「跡部様、どこにいるか、ご存知ないですか?」
「え?跡部なら、あっこに...」
指差した先の光景に、嬉しそうにした後輩たちは、ありがとうございましたっ!と会釈する。
「レギュラーいるじゃん」
「芥川先輩、起きてるかなぁ」
各々、気になるメンバーを見つけて姦しい声をあげる。
(芥川ねぇ)
あいつの何がいいんだ?寝てるだけだぞ、と歩き出したが、すいませんっ!と再び同じ声に呼び止められる。
「あの人って」
あの人?と彼女が指さす方を見ると、跡部と忍足の間に座り、右隣の跡部と談笑している笑顔。
「どなたか、ご存知ですか?」
いや、と首を振る。
「忍足と一番親しそうな感じだったけど
彼女じゃね?」
急に雰囲気の変わった場に、え?と固まる。
彼女たちを割るように前面に出てきたのは、アッシュブラウンの髪を綺麗に巻いた女性。
「それ、本当ですの?」
気迫さえ感じる声と瞳。
昨年度まで高等部に在籍していた彼女から目線を逸らす。
少しの沈黙のあと、対峙する彼女は後方の生徒に問いかけた。
「見たことある方は?」
「知らないです」
「高等部か、大学部の方、ですかね?」
「それなら、ミア様とカヅキ様がご承知のはずでは?」
中等部の茶色のブレザーの集団は、確かに、と頷く。
「ご存知、無いのですよね?」
すっ、と向けられた瞳に、し、知りません、と後退りする。
「お聞きしたいのですけれど、今年の高等部の男子テニス部に、マネージャーはいらして?」
「い、いえっ!氷帝にはマネージャー制度、無いので」
三軍以下がその役割をやることになっている、と聞いた彼女は、ですわよね、と視線を木陰のメンバーに移した。
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