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She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第5章 始まりの朝


配られたプリントを元に、表計算ソフトで資料を作っていく。

図形の配色が気に入らなくて弄っていると、忍足君、と呼ばれる。

「なんや?」
隣に座る男子生徒が、聞いていい?と差す画面を見る。

「表の縦の数値の変え方なんだけど、」
貸してみ、とキャスター付きの椅子ごと動いて、以前の授業でやった操作を彼のパソコンでやる。
「あ、そっちのタブか」
「表の上で右クリックでも出てくんで」
ここ、と違う入り口を教えてやると、助かった!と言われる。

まあなんとか、と言うほどには納得がいく表を作り、文字幅や体裁を揃える。

ふと、大学生になったばかりの姉がレポートを作るのにパソコンを使いながらああじゃない、こうじゃない、と悩んでいたのを思い出した。

(マコトも、あないしてレポート作っとるんやろか)

大学の授業ってどんなやろ、と過ぎた午後一番の高校の授業時間は、ひどく長く感じた。

 ✜

ホームルームが終わっても、雨は降り続けていた。

-傘、買うた?-
下駄箱に向かいながら送ったメッセージは、すぐに既読された。

-売店の売り切れてた
コンビニ寄ってみる-

その間どうするん、と下足に履き替える。

問いかけに返ってきたのは、そこまでダッシュ!のメッセージと走るシマエナガ。

「飛ばんのかい」
鳥やろ、とついツッコんでしまう。

-まだ、大学におる?-
-いるよー-
-迎えに行ったるさかい、濡れんとこで待っとき-
折りたたみの傘をさして部室に向かう。

-え!いいよっわざわざ-
-濡れる気か?風邪、ひくで-
-誰かに借りるよー-
-ええから、待っとき-

部室に常備しているビニール傘を1本取って、いつもとは逆方向に行くバス停に向かう。
横を通り過ぎたバスの後方電光板に『泉深女子短期大学行き』という文字を見つけ、制服の裾が汚れるのも気にせずに駆け出した。

イヤホンで歌謡曲を聴きながら、大学が多く集まる学術都市を走るバスに揺られる。
この先のバス停を表示している前の掲示板を見る。

(しもうた)

3つほど先までのバス停を示す掲示板には、
『泉深女子短大 経済学部前』
『泉深女子短大 正門』
『泉深学園附属図書館前』...
どこが近いんねやろ、と真珠にメッセージを飛ばす。

-最寄りのバス停、どこ?-
-正門が近いです!-

なんで敬語なんや、と少し笑った。
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