She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第39章 デートの日1
裏路地で、日焼けしているような古い書籍ばかりが積み上げてある書店で、初めて聞く作家の恋愛小説を一冊買った。
まだ、自由恋愛が珍しい時代に描かれた、若い男女の物語だった。
昔ながらを装ったものではない、本当に昔からある駄菓子屋でカタヌキをした。
真剣な顔で「カンタン」に励む真珠が2つ目を失敗した頃、隣の侑士は「ムズカシイ」をすでに3つ完成させていた。
腰の曲がった店主の女性が、好きなの3つ持っていっていいよ、と天井から吊り下がるスーパーボールやチープなアクセサリーがぎっしりとついた台紙を指さす。
二人がやっていたカタヌキに挑戦していた幼い女の子が、うまく形を抜けずに俯いていた。
チラ、と見上げた侑士は、少し笑って、その子に声を掛けた。
「3つ選んでええ言われたけど、二人やねん。
1個、お嬢ちゃんが選んでや」
「いいの?」
不安そうに見上げられた真珠は、女の子と目線の高さを合わせた。
「二人だから3つもらうと喧嘩になっちゃうの。
だから、1つもらってほしいな」
それなら、と嬉しそうに笑うと、光る指輪を選んだ。
ありがとう、とはにかんで、さっそく指輪をつけた。
「大きゅうなったら、光らさんでも輝く指輪もらうんやで」
子どもになに言ってるの、と苦笑する真珠。
「そうやねぇ、お兄ちゃんも早く買ってあげないと。
キレーな指がさみしいわ」
なあ、と笑う店主に、そうですね、と笑って、侑士は真珠の左手を取った。
「あん飴玉くらい大きいやつ、買うたろか?」
侑士が指すのは、指輪型の土台にダイヤモンド型の飴がついた駄菓子。
「指が折れそう」
クスクスと笑う真珠。
「ほな、今はこれで我慢しとって」
そう言って、景品から選んだ、金の細い土台に濃いブルーの石がついたおもちゃの指輪を真珠の右手の薬指に通した。
「ほんまもんは...まぁ、10年以内には」
な?と流し目に見下され、侑士の腕に抱きつく。
「こ◯く◯も◯くらいでいいです」
「いや、指輪の石としてはなかなかでかいで?」
1cm角の駄菓子に、じゃああれくらい、と指差したキラキラのネイルシールを景品に1枚もらい、駄菓子屋をあとにした。
✜