She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第5章 始まりの朝
(ズルいっ、ズルいてっ)
校門目の前のバス停のベンチに座り込む。
「俺、えらい人好きになってしもうたんやろか」
熱く感じる頬に触れ、落ち着け、と深呼吸する。
(マコトとおると、)
「気ぃ、狂いそうやわ」
はぁ、と膝に肘をついた手に顔を埋める。
「なにが狂うんだ?」
「おぅわっ!」
驚いて立ち上がると、横に掛けていたラケットバッグを倒しそうになって焦る。
「なにしてんの?」
「が、ガクト、おどかしなや」
ビビった、とまだ鼓動が早い胸を押さえる。
「なに、座り込んでたんだよ?」
学校入らねぇの?のガムを膨らます向日に、なんもないわ、とバッグを持つ。
「ちょっと、心臓持ちそうになかっただけや」
「どっか悪ぃの?」
父ちゃんに見てもらえば?と言う向日と歩き出す。
「アホか。おとん、脳神経の医者やで」
「医者は医者だろ?」
せやけど、と呆れ声を出して、溜息。
「ええのぉ、ガクトは悩みなさそうで」
「ひっでー!俺にだって悩みくらいあるしぃ」
さよか、と軽く流し、部室に向かう。
相変わらず朝から元気な向日をほとんどスルーしながら、コートに行く前に携帯を見る。
-財天座に一番近い駅の6番出口上がった所にあるミューズ像の前でいいかな?-
真珠からのメッセージには、OK?と小首を傾げるシマエナガ。
「好きやな、シマエナガ」
「え?島流しがなんだって?」
「誰が罪人やねん。後醍醐天皇ちゃうんぞ」
「うわっ!
天皇で思い出したっ今日、歴史小テストじゃんっ」
やっべー、と慌てる岳人に、ご愁傷さん、とラケットを手にコートへ向かう。
「数学もやで」
「うっそー!」
侑士、ノート見せてぇ、と縋ってくる向日は中学から変わらない。
「すぐ中間やで。大丈夫かいな、自分」
「ゆーしぃ、」
甘えた声を出す岳人に、やめぇや、と軽く引く。
「ジローにも渡しときや」
ポイ、と投げた折った紙を、岳人はよっしゃー!とキャッチ。
授業中、寝てばかりの芥川に、テスト前に作ってやる『対策プリント』。
以降、それを知った鳳と日吉に強請られて自身が受けたテストを参考に作ってやったそれを、ズルだ、と騒いだ向日。
定期テスト前。自身の勉強も兼ねてテスト範囲をまとめたものを作っていたが、高校では自分で勉強しぃや、と苦言したが、侑士のプリントが一番わかり易いと言う向日に、呆れるしかない。
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