She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第38章 戦友(ライバル)と後輩(ルーキー)
「すんませんっ!」
「あの、やめてください!
鞄は取り返していただいたわけですしっ
むしろ、本当に感謝していて」
「いやぁ、でも犯人、逃しちまったし...」
一度は捕まえたが、奪った鞄を投げつけられ、それに気を取られていたら逃げられてしまった、と申し訳なさそうにする。
「ご連絡先とお名前を頂戴できますか?
後日、お礼の品を持って伺いますので」
背の高い短髪の少年が取り返してくれた鞄から、手帳とボールペンを取り出す。
「いっすよっ!そんな、」
「けど、」
「素直に引き下がれば?
桃先輩もこう言ってるし、めんどくさいやりとりが続くだけだよ」
「お前は何もしてないだろ」
「いたっ」
小突かれた少年は、小生意気そうな目で背の高い少年を見上げた。
「あの、本当にありがとうございました。
えっと...桃、さん?」
「桃城 武っす!
青春学園の中3っす」
「ちゅっ、中学生さんっ!?」
てっきり高校生かと、と目を見開いた。
「『先輩』と言うことは...?」
小柄な彼に目を向けると、くい、と帽子のつばを引き下ろした。
「越前 リョーマ。中2」
「っりょうまさん!かっこいいお名前ですね」
ッス、と会釈した越前。
「なんだよ越前?照れてんのか?ん?」
「やめてください、桃先輩」
肩を腕を乗せる桃城をうざったそうに払う越前。
「自己紹介が遅れました。
調月 真珠といいます。泉深女子短期大学の2年です」
「えーっ!?大学生なんすねっ」
「すみません、その反応はどう捉えたら?」
「いやぁ、OLさんかなぁ、と思ってました。
社会人!って雰囲気あったんで!」
はは、と笑って誤魔化し、話題を変えよう、と二人が持つバッグを見やる。
「お二人は、部活の先輩後輩ですか?」
「はい」
「俺等、テニス部なんすよっ!」
「ああ、やっぱり。
青春学園、名門ですよね」
「テニス、詳しいんすか?」
詳しい、と言うほどでもないのだけれど、と取り返してもらった鞄を持ち直す。
「恋人が氷帝学園の学生で」
「「氷帝っ!?」」
え?誰...?と呟く越前。
「あ、でも、大学生はさすがに知らねぇなぁ、知らねぇよ」
桃城の言葉に、いえ、と首を振る。
「年下なんです。今、高校1年生」
「「誰っ!?」」
間近に迫る二人に、えっと...?と気圧される真珠だった。
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