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She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第38章 戦友(ライバル)と後輩(ルーキー)



少し時間が戻って、青春学園中等部。

「おーい、越前!」
「ぐえっ」

ホームルームが終わって帰宅しようとした越前は、昇降口で背後から乗っかってきた巨体に、靴箱に手をついて耐えた。

「なんすか、桃先輩」
「ちょっと付き合え」
「イヤッすよ」
「マ◯ク奢ってやるからよ」

奢りならまあ、と頷く。

副部長となった桃城は、部長の海堂とぶつかり合いながらも、本人たちは不本意ながら、対極的な互いを補い合うようにして青春学園中等部男子テニス部は相変わらずだ。

いつも通り、桃城の自転車の後ろに立って通学路から少し外れた道を行く。

「おっと」

速い速度で隣を追い抜いていった自転車に、あぶねぇなぁ、あぶねぇよ、と桃城が呟く。

「「あっ」」

声を上げたのはほぼ、同時だった。
前方を歩いていた女性の鞄をひったくった自転車に、あいつっ!と、桃城がグリップを握り込んだので、やべっ!と自転車から飛び降りる。

「待て、コラァー!」

角を曲がった自転車を追いかけていった桃城に、あーあ、と帽子のつばを下げる。

「行っちゃったよ」

まあ、桃先輩の脚力なら掴まるかな、と鞄を奪われた人に歩み寄った。

呆けていたのか、ひどく驚いていた。

「かばん、アンタのなんだよね?」
「え、あ、はい。そうです」
「たぶん、桃先輩が捕まえてくるから、待ってたら?」
「え?あ、もしかして、追いかけてくれた自転車の人?」

捕まえてくるかまでは分からないが、桃城なら鞄を取り返してくるくらいするだろう、と菜々子と年齢が近そうな彼女を見る。

「なに?」

じっと見てくる視線に問うと、ごめんなさいっ!と慌てたように手を振る。

「テニス、されてるのかなって」

ジャージとラケットバッグだけでテニスと判断した彼女に少し、興味が出る。

「彼、が...テニス部さんでして...」
なんだ、そういうことか、と興味を削がれた。

「へえ」
そう言って、ひったくり犯と自転車が去った方を見やる。

追いかける、と言った彼女と角を曲がると、倒れた自転車と歩道で叫ぶ桃城がいた。


犯人は取り逃がしたようだが、桃城の手にはしっかりと彼女の鞄があり、やるじゃん桃先輩、と、倒れた自転車を起こしに向かった。

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