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She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第38章 戦友(ライバル)と後輩(ルーキー)



午前の講義が終わり、午後は休暇を取る職員の代替で組まれていたシフトを終えて帰路につく。

(ゆう、大丈夫かな)

気になるが、昼休みの時間になってもメッセージが来ることはなかったので、きっと睡眠時間に当てたのだろう、とこちらからのメッセージは控えた。

(早く帰って寝るといいけど)

夕飯が終わった頃に一度だけメッセージを送ってみよう、と横断歩道を渡った角を曲がった時だった。

「っわっ!」

突然の衝撃に、え、と固まる。
走り去っていく自転車。

「えっ?」
左肩がやけに軽く感じ、そちらを見ると手ぶら。

「ええっ!?」
通りをまっすぐに走ってく後ろ姿。
片手に揺れる鞄はさっきまで自分が持っていたはずのもの。

「ひったくりー!」

待てー!と大声を出してみるが、相手は止まるはずもなく、後先考えずに追いかけようと走り出す。

「待て、コラァー!」

「え?」
ヒュン、と背中から隣を駆け抜けて行った風に脚が止まる。

自転車の後輪を滑らせるようにして、ひったくりと同じ方面に曲がって行った姿に、え?なに!?と戸惑う。

「ねえ」
「ひゃっ!はひっ!?」

後方からの落ち着いた声に振り向くと、白いキャップを被った男の子がいた。

「かばん、アンタのなんだよね?」
「え、あ、はい。そうです」

どうしよう、と逃げた犯人と追いかけて行った自転車の方を見る。

「たぶん、桃先輩が捕まえてくるから、待ってたら?」
「え?あ、もしかして、追いかけてくれた自転車の人?」

うん、と頷いた少年が肩にかけているものに目が止まる。

「なに?」
「え?あ、ごめんなさいっ
 あの、もしかしたら、テニス、されてるのかなって」

へえ、と少し驚いた顔をした少年。

「テニス、してんの?」
「いいえっまったくの未経験でっ
 ただ、その、彼、が...テニス部さんでして...」
「へえ」
そう言って、ひったくり犯と自転車が去った方を見やる。


「桃先輩、捕まえたかな」
「え?あっあの、私、ちょっと追いかけますので」

それじゃあ、と自転車の彼とひったくり犯が曲がった角を曲がると、少し先に倒れた自転車があった。

「くっそー!
 バチが当たれ!ひったくり野郎〜!」

通りの向こうを睨みつけて大声をあげる彼の手に、自分の鞄があることに気付き、あの、と声を掛けた。

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