• テキストサイズ

She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第37章 君との時間がいつもの自分 ❦



「やけどすんで」

布で包んだ蓋をした深めのフライパンから、真珠の顔を引き離す。


小田巻蒸しにも使ったしいたけは飾り切り。
薄く切った人参。種とワタを取ったピーマン。
輪切りの玉ねぎに爪楊枝を刺し、あとなんかないかなぁ、と冷蔵庫と食品庫を漁ると、ナスと蒸しトウモロコシがあった。
ナスはよく洗って皮を残して4つに切り分けて切れ込みを入れる。
トウモロコシは、包丁でそぎ落として小さなボウルへ。

「マコト、それ、粒にほぐしとって」

はーい、と、氷帝学園中等部テニス部のホームウエアのハーフパンツを履いた真珠は、手伝いを始める。

別のボウルに粉と水を溶いて衣を作ると、揚鍋に油を注ぐ。

「離れときや。火傷すんで」
わかった、と頷いた真珠に、シャツの袖をめくって野菜たちに衣をつけて油に投下する。

「コメが冷や飯なんよなぁ」
「あっためる?」
それでもええねんけど、と取り出した油切りバットのバットをすすいで水気を取ると、厚手のキッチンペーパーを引いて簀子を掛ける。

「悪魔おにぎりにしよか」

青ネギあったかな?と揚げ油の中でくっつかないように、野菜たちを泳がせる。

「天かす入った天つゆ?で味付けしたおにぎり?」
「せや。
 夜、コメ食わんと腹減るん早いんよなぁ」
「おうどん、腹持ちはよくないもんねぇ」

あとはお野菜だし、と、丁寧にとうもろこしをほぐしていく。

「2時間ドラマ
 箱根温泉駐在所事件簿
 老舗割烹旅館連続殺人事件
 愛憎渦巻く天ぷら鍋」
「なんやそれ
 『愛憎渦巻く天ぷら鍋』て、どんな2時間ドラマや」
「次々と殺されていく旅館関係者っ
 現場に残されたのは天ぷら鍋。
 犯人はっ!?その動機はっ!?」
「天ぷら鍋でどうやって殺してん?
 犯人と動機、めっちゃ気になってきてもうたやんけ」
「そこまで考えてなかった」
「おぉいっ!」

できたっ!と差し出されたボウルを、嘘やろ、と侑士は苦笑しながら受け取る。

「ちゃんと脚本書いてや、先生」

適当がすぎるわ、と、それに粉と水を加えてざっくり混ぜる。


「とうもろこしって子どもがちゃんと言えない野菜ナンバーワンだよね」
「そういえば、翔太も言えてへんかったな。
 『ともろしし』言いよった」

ショータ君?と見上げる真珠に、謙也の弟や、と衣でまとめた粒を油にそっと落とした。

 ✜
/ 311ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp