She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第37章 君との時間がいつもの自分 ❦
僅かに開いた真珠の唇。
「待ちぃや」
下がり始めた頭を両手で支える。
「やだ?」
「いやっちゅうわけ、ちゃう、けど」
その、と視線を周囲に巡らせる。
「手の方が良い?」
「口より手がええとか、そういう事ちゃうんよ」
「でも」
じっ、と見つめる真珠。
張り詰めたそこに、多少の甘い痛みは感じている。
我慢出来ないほどかと言われると、まだ、何とかなる。まだ。
「帰って、しよや」
「...わかった」
「眼鏡、返して」
大人しく引き下がった真珠の胸元から眼鏡を取ろうとすると、やだ、と言ってそれを自身が掛ける。
「はーやくー」
腕を引く真珠に、待ちや、と服を着て、荷物をまとめる。
ずれる眼鏡の位置を変える真珠。
(顔、ちっさ)と見つめる。
「ア◯レちゃんみたいやな」
「紫にしてぱっつんにする?」
髪、と自身の髪を摘む真珠の手を握る。
「そんまんまがええ」
「ねえ、どうしよっか。
ホテル...は、ゆう、まだ入れないもんね」
「...行ったこと、あるん?」
「一回だけ」
ピタリ、と足が止まり、は...?と固まる。
「同期とね、女子会したの」
はい、と真珠が差し出した携帯には、飾り付けがされた、侑士が想像するそういうホテルとは懸け離れたかわいらしい部屋。
「女子会プランってあるんだよ。
一人三千円くらい。
大きいテレビで動画配信の映画とか見れるし、カラオケしたり、コスプレ借りたり、デリバリー取ったりして、プチパーティみたいな事できるの。
ここは、オプションでケーキバイキングもできた」
楽しかったよー、と言う真珠。
「安心と複雑が絡み合った表情してる」
「わかっとるなら最初からそう言うて」
無駄にドキドキしてもうたやん、と胸を押さえる侑士から携帯を受け取った真珠は、ごめんね、と笑った。
ねえ、と引かれるジャージの袖をに、ん?と聞き返す。
少し背伸びをして、耳元に口元を寄せた。
「ゆうが18になったら、行ってみよっか」
ラブホテル、と囁くように言う。
「誂うんも大概にしいや」
「む、もうちょっとかわいい反応があると思ったのに」
つまんない、と言う真珠を引き寄せ、今度は侑士が真珠の耳元に口を寄せる。
「手取り足取り、教えてな。先輩」
2年後の話やけどなぁ、と言う声に、ずるい、と赤い顔で耳を押さえた。
✜
