She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第37章 君との時間がいつもの自分 ❦
「ほんまに、すまんかった」
驚かせて、と握る手を見つめる。
「ゆうって意外とこうなるタイプ?」
目の横で立てた手のひらを前に振り下ろした真珠に、そんな事無いはずやけど...と口籠りながらベンチに腰掛ける。
「ちょっと嬉しかったよ」
嬉しかった?とまともに見れなかった真珠の顔を見上げる。
「だって、あんなにたくさんの人だったのに、すぐに気づいてくれたから」
それは、と握る手に指を絡める。
ヴー、と低く響く音に、見つめ合った真珠と首を傾げる。
「あ、ゆう、携帯...」
即席の付箋による名札が貼られているロッカーから聞こえる、と真珠が指さした。
確認すると、着信は母からだった。
-大丈夫?-
その一言だけだったが、うん、と頷く。
-夕飯はどうする?-
真珠を見ると、大人しくそこに立って待っていた。
「適当済ますから、ええよ」
-そう、あまり遅くならないようにね-
「ん、今日、ごめんな」
-私に謝ってどうするの-
「一応と思て」
-真珠ちゃんに謝るのよ?
「かっこいいところ見せれんでごめん」って-
「...しゃあしぃわ」
-お疲れさまでした-
「来てくれて、おおきにね」
はーい、という声を聞いて切電する。
ロッカーから荷物を出して、真珠の隣に座る。
何も言わずに、低い位置の頭に頬を寄せる。
上目に見上げてくる真珠に、甘えるように擦り寄って目を閉じた。
「帰ろっか?」
「ん、もうちょい」
指先で撫でる手を握る手。
守りたいんに守り方がわからへん、と持ち上げて、甲にキスをする。
「侑士」
珍しく『侑士』と呼ばれて、少し照れる。
「マコト?」
髪を耳にかけて、膝に乗るように近づいてきた。
「どないしてん」
真珠が膝立ちになるベンチがわずかに音を立てた。
少し開かれた脚。
ペタリと膝の上に柔らかい肉の感触があり、ギクリ、とする。
「なぁ、どうし、」
居場所のわからない両手をベンチにつくと、熱の引いた身体にピタリとくっついてくる柔らかい感触と甘いジャスミンの香りに固まる。
「あ、」
取り上げられた眼鏡。
返して、と伸ばしかけた手は、首に抱きついて唇を塞いできた真珠に、固まったままだった。