She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第5章 始まりの朝
じ、と布団の中で携帯の画面とにらめっこしていた侑士は、デジタル表示の時計が06:45を示した瞬間に、アラーム停止をタップした。
(勝った!)
いつもならまず、ベッドの上で上体を起こし、低血圧状態の頭で数分ぼーっとする朝。
早々に床に足をつけ、カーテンを開ける。
(天気、良さそうや)
よかった、と背伸びをする。
「っしゃ」
慣れ始めた新しい朝が、また、新しくなった。
(マコト、起きとるやか)
おはようさん、とメッセージを飛ばしてみる。
トイレから戻ると返事が来ていて、-おはよ。。。-と言う一言と寝ているクマのイラスト。
「冬眠はじめました」という立て看板の奥で寝ているクマに、起きる気ないやんけ、と笑う。
-起きやぁ。遅刻すんでぇ-
-暖かくなったら起こして-
-本気で冬眠する気かいな-
-できるものならしたい-
-暦の上ではとっくに春やで。
バス、逃しても知らへんよ?-
送られてきたのは、ひどーい、と噴水のような滝の涙を流す小鳥。
リズムよく続いたやりとりに、起きたやろか、と洗面所へ向かう。
顔を洗うと、-バス、何時?-のメッセージ。
-07:18-
-らじゃ-
敬礼している小鳥は、なかなか凛々しい顔立ち。
-父に『槍が降る』って言われた-
-なんでやん?-
「おはようさん」
キッチンにいる母に挨拶し、今日はパンか、と定位置の席に座る。
パジャマの胸ポケットの携帯がメッセージの到着を告げる。
-「穴持たず」とか言われたから、父にお茶、淹れないことにした-
ボイコットだっ!と勇ましく銃器を構えるミリタリー調の小鳥。
(オトンにお茶淹れるん、日課なんや)
「ゆうちゃん、卵、どうする?」
「んー、スクランブルエッグ...」
はーい、と返事をした母が、あら、と言う。
「見て、双子」
黄色のまんまるがボウルに2つ。
「なにかいいことあるのかなぁ?」
そないなことで?と真珠にメッセージを送る。
-オカンが割った卵が双子やった-
-おっ!今日は何かいいことがあるでしょう-
母と似たようなセリフで、うんうん、と頷く鳥のイラスト。
この小鳥、何やったっけ?とよく見るようになった白くて丸っこい鳥を見つめる。
「シマエナガか」
「なに?」
スープに入れる野菜を切っていた母に、なんもないよ、と答えて、携帯をポケットにしまった。
✜
