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She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第4章 セカンドチャンス



パッと点いた照明。

清掃始まったスクリーンに、出よか、と立ち上がった侑士に、う、うん、と残りの涙を拭って座席を立つ。

瞳を見つめ、「住めたのなら」と言った真意が分からず、声を掛けられない。

スクリーンを出ると、立ち止まった侑士は、振り向き様に頭を下げた。

「すんませんっ」
「っど、どうしたのっ?」

顔上げて?と言うと、恐る恐る、と言った様子で上げ、えっと、と少し先を指す。

「もう少し、付き合うて?」

うん、とついて行った先は、モール内の中庭のような花が植えられた花壇が並ぶスペース。

合間のベンチに並んで腰掛ける。

「その、勝手に触れたりしてもうて」
「気にしなくていいのに」
だいじょうぶだよ、と微笑み、でも、と続ける。

「勘違いしちゃう子もいると思うから、あまり、むやみにしない方がいいよ」
お姉さんから忠告、と告げる。

「勘違い、ちゃうよっ」
「ん?」

やから、と、近づいた侑士の顔に、(わっ)と驚く。

「勘違いやなくて、ホンマに、そう思ってん」
「え?」

俯いた視線を追うと、掴まれた手に見上げる。

「侑士くん?」
「好き、なった」
「す、き?」
「真珠さんこと、俺、好きや」

え、と動いた手に、力が込められる。

「俺だけ見てほしい」

続いた言葉は、さっきの映画で、彼が最初に主人公へプロポーズした時の言葉。

「ずっと、この場所、欲しい言うたら、困る?」
繋いだ手を持ち上げ、真珠の手の甲にキスをした。

映画では、左手の薬指だった。

「Noなら...手、離して、ええ」
俯いて手を開いた侑士。

「Yesやったら、手、握ってほしい」
それは、映画と同じ。

 ✜

(告白って、こんな緊張すんねや)


正直、氷帝に入った中学の時は毎日のように告白を受けた。
高校に上がった今でも手紙は貰うし、面と向かって告白されても、(ああ、またか)くらいだった。

  恋愛するために東京来たんちゃうから

そう言って断るのが通例。
今更、告白をしてきた顔も思い出せない女生徒に申し訳なく思う。

僅かに震える自身の指先に気づいて、(カッコ悪)と目を閉じる。

手に伝わる感触に、息が詰まる。

「侑士くんの手って、きれいだね」

そっと手を包む小さな手を握ると、真珠は、ニコリと笑って、その手を握り返した。


 ✜
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