She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第36章 ライバル現る?
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校内選抜で落ちた生徒が練習をしているコートへ向かうと、ざわつきが一瞬消え、いくつかの視線を受ける。
濡れた髪を、真珠がしてくれるようにハーフアップで結ぶと、3軍以下の練習用ボールを適当に掴み、壁打ちをする。
壁のある一点にだけ、テニスボールよりも僅かに小さな後が跡が残り始めた頃、ゆーし!とコートに声が響く。
「お前っ何やってだよ!
ダブルスの試合、始まるぞっ」
向日の声に返事をせず、壁に当たって跳ね返ってきたボールを強く打ち込む。
ドンッ!と鈍い音を立てて壁に当たるボール。
その行方を見らずに、入口へ向かう。
跳ね返ったボールは、コートから去る侑士が置いたボールが詰められた籠の中に、トスッと入った。
✜
「フォーティーンラブ!忍足向日ペア、マッチポイントです」
審判役の声に、向日は後方の侑士が舌打ちしたのを聞き逃さなかった。
「ゆーし!」
「なんや、はよ位置付きや」
マッチやで、とボールを床打ちする。
「お前っなんかおかしいぞ」
「なんもおかしない」
早よせぇ、とサーブの構えを取る侑士。
(なにに苛ついてんだよっ!ゆーし)
ふー、と細く息を吐いて相手コートを見据える目が、何か違うものを見ているように感じた向日。
いつもならきちんと「ダブルス」をする侑士が、なぜか今日は独りよがりに動いており、おかしい、と感じる。
(シングルスの時だって...)
外野に球を放った真相は知らないが、ガヤに腹が立ったんだろう、という部員の憶測に納得していなかった。
(そういや、マコトちゃん、来てねぇのかな...)
侑士の母は、試合が始まる前に跡部の母と話しているのを見かけたが、真珠の姿は見ていないな、とギャラリー側に目を向ける。
人波から飛び出すように最前列に出てきた小さな影。
ギャラリー席の前方のフェンスに掴まる真珠。
侑士は、それに気付いていない。
他の試合のコールやギャラリーのざわつきがある会場。
「氷帝、ファイトー!」
確かに聞こえた真珠の声。
その声に気づいたのは侑士もであった。
「勝つのは忍足ー!勝つのは向日ー!
ダブルス、ファイト~!」
「マコトちゃん?」
僅かな笑い声に振り返ると、ギャラリーを見上げる侑士は、笑っていた。
「ほんま、かなわんわ」
侑士が纏う雰囲気の変化に、いくぜゆーし!と向日はラケットを握り込んだ。
