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She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第36章 ライバル現る?


勢いよく捻った蛇口から真白に流れ出る水は、あちらこちらに跳ね返る。

くくっていたヘアゴムを雑に取ると、その流水に躊躇いなく頭を突っ込む。

濡れていく髪が垂れ下がり、水とともに揺れる。

顔を濡らす水に、そっと目を閉じて息を吐く。


「幾分、荒んでいるようだな」

流水の合間から聞こえた声に、ゆっくりと頭を上げ、濡れた髪を雑にかき上げる。

ウエアの裾をつかみ上げて顔の水を拭い、目の前の鏡の中を裸眼で睨みつける。

「...お久しぶりです。越知先輩」

腕を組む越知を振り返る。

「...すんませんでした」
ルール違反です、と言った謝罪に、構わない、と越知は壁にもたれた。

「お前にも、あの様な球が打てるのだと知れてよかった」

顎先に伝う水を腕で拭い、濡れた髪を手櫛で纏め上げる。

「斎藤コーチへの敬意か?」
は?と見上げると、結うようになったんだな、と低い位置で一つに纏めている髪を指す越知。

「ちゃいますよ。
 切るん、めんどいだけです」

一度まとめた髪の水気を絞り、ざっくばらんに耳上の辺りまでの髪までをまとめ直し、後頭部の中ほどで縛る。

「心を乱すほどの人か。彼女は」
「『彼女』なんで」

失礼します、と眼鏡を掛け直して、越知の隣を通り過ぎる。

「彼女、名はなんという?」
はい?と立ち止まって振り返った。

「興味が、ある」
「っ失礼しますっ」

キュ、とモルタルの床を鳴らすシューズで駆け出す。

濡れていたせいか、結っていたヘアゴムが滑り落ちたが、拾わずに人気のないロッカールームに行き、頭からタオルを被ってベンチに座り込んだ。

-1年忍足 侑士君。運営本部まで来てください-

繰り返します、と言うアナウスンスに立ち上がる。

運営部に行くと、先ほどの客席に打った球のことを聞かれたので、「野次に腹が立った」と嘘をついた。
気持ちは分からなくないが危険な行為だ、と真っ当な指導を受けて試合に戻る。

トーナメント表の「忍足侑士」の名前が青で表示される。
あと一つ指摘を受ければ失格。

気持ちを切り替えようと、ラケットを手に、ウォーミングアップ用に開けられているコートへと向かった。

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