She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第36章 ライバル現る?
(入っていいの?)
そびえ立つ、と言える氷帝学園の門を見上げる。
門をくぐった先の案内板を見て、侑士が言っていた会場を探す。
(人が、いそう)
あの向こう、と並木道と言えそうな木が並ぶ道を右に曲がると、4面のテニスコートがあった。
ズラッとコートが並んでいて、という設備を想像していた真珠は、意外、とコートに降りていく階段へ向かった。
そのコートにいるのは、テニスウエアを来た学生たち。
打ち合いやコートの脇で話している彼らを見ながら、周囲を回ってみる。
コートは思ったよりも奥まで続いていて、最奥には体育館のような建物があった。
壁には大きく「氷帝学園 屋内テニスコート」の文字。
(全天候型というやつですか)
侑士との付き合いが深まるごとに増えていくテニス知識。
建物の一箇所の扉から、数人の保護者と思われる人が出入りしているのを見つけ、そこを目指す。
そっと扉を開くと、奥にまた扉がある。
(劇場みたい)
奥の扉の奥からは、僅かに声が聞こえる。
タイルや壁際の下駄箱に並ぶ靴。
履いていたヒールを脱ぎ、靴箱の空きに置くと冷たいモルタルの感触がストッキング越しに伝わる。
中へと繋がる扉に手を伸ばすと、スッ、とその扉が開いた。
その途端、中から溢れ出てきた歓声と言える声や応援の声に固まる。
「すまない」
「え?」
見上げた侑士よりも背の高い影に、おお、と少し気圧される。
「す、すみませんっ」
どうぞっ、と慌てて脇に避けようとしたが、足元が滑る。
「ひゃっ!」
とさっ、と受け止められた感触に、え?と顔を上げる。
「棚のスリッパは、来客用だ。
自由に使っていい」
「へ?え??スリッパ?」
態勢を立て直してくれた人は、真っ白な髪の前髪の一部だけが青く、目が見えないくらいに長い。
待っていろ、と言った彼は、靴箱から残っていたスリッパを手にして戻ってきた。
「使うといい」
「あ、ありがとうございますっ!?」
屈んだ彼に掴まれた足首に驚く。
「サイズがこれしかない。すまないな」
「と、とんでもございませんっ
あ、あの、そんなご丁寧にっ」
申し訳ないですから、と慌てていると、立ち上がった彼はじっと見下ろす。
「卒業生か?」
「い、いえっ」
えっと、と俯く。
「恋人、の、試合を見に、きました」
最後の方は、自分で聞こえないほどに小さくなった。
✜
