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She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第35章 二人の音色



ギッギィイーッ

「金切り音」と言うに相応しい音。

侑士が幼い頃に使っていた小さなバイオリンを構える真珠は、半べそ顔だった。

「無理ぃ!」
「言うたやん、摘むだけやて。
 押さえつけたらあかんよ」
「力加減難しいっ」

持ってみ、と真珠の弓を持つ手に手を添えて、後ろに立つ。

「そう。肩と頬で支えて...
 力入りすぎや、もっと優しゅう...」

こうや、とそっと弦に当てる。

「そんまま、スルッと手の力抜くみたいに弓を下ろしてみ」
「スルッ、と」
か細くなった、耳障りではない音に、鳴った!と侑士を見上げる。

「えっと、置いて、スルッと下ろす」
さっきよりも明確に、確かに鳴った音に、出せた〜!と喜ぶ。
「すごーい!鳴らせたっ」
感動!と目を輝かせる真珠の頭を、上手やん、と撫でる。

「ご褒美やろか」
ご褒美?と見上げる真珠にキスをする。

「ん、」
「そんな目で見んといて。
 襲うで?」
「じゃあ、こういう目で見る」
じと、とした目をする真珠に、やめぇや、と笑う。


「もし子供ができたら、バイオリン、習わせたいな」

そう言った真珠から受け取ったバイオリンをケースにしまう。

「女の子ならピアノにして、ゆうとセッション?してほしい」
「そら、ええな」
それまでちゃんと覚えとかんと、微笑む。

当たり前のように未来(さき)の話をする真珠を抱き寄せる。

「傍におってな」
「ゆう?」
「ずぅっと、俺とおって」
見上げる真珠の耳に髪をかける。

「愛しとる」
頬を撫でた指先で、唇をなぞる。

照れて俯く真珠の細い顎を掬い上げ、唇を重ねる。

シャツを掴む手を握り、唇を撫でた舌先に躊躇いがちに開いた隙間から、小さな舌を吸い出す。
こじ開けるように差し込んだ舌で上顎を舐めると、ビクッと震えた体を抱き竦める。

「ふっ、ん」

ふらついた真珠の脚をすくい上げるように抱き上げると、ひゃあ!と首に抱きついてきた。

そのままベッドに乗り、そっと寝かせた上から見下ろす。

「いややないなら、目、閉じや」

すぐに閉じられた瞼にひとつキスをして、首筋に唇を寄せる。

「んっ」

擽ったい、と身を捩る真珠の左手に指を絡めてゆっくりと距離を詰めると、封じ込めるように腕の中へと抱き締めた。

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