She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第35章 二人の音色
「あとは煮込む」
終わり、と火にかけたフライパンに蓋をして、コンロのタイマーをセットする。
「意外とお手軽」
「丸一匹使うんが定番やけどね。
ほんまに、切った野菜とぶっ込んで終わりやん」
メインできた、あとは...と考える侑士。
「なんや?」
包丁使うからな、と背後から腹部に腕を回す真珠に言う。
「くっつきたくなった」
「そういう事言うとるとなぁ」
安全な場所に刃物を置き、ゆっくりと振り返ると真珠の腕が緩む。
よ、と向かい合ったまま抱き上げた。
「ひゃあっ!?」
「しばらく俺ん部屋、籠もっとくか?」
びっくりした、と侑士の肩に掴まり、ん?と笑う顔を見下ろす。
どないする?と問いかける声に、ギュッと首に抱きつく。
「あの、」
「ん?」
「夜、なら」
肩に埋もれる真珠をしっかりと抱える。
「なら、またゆっくり映画でも見よか」
音楽流して本読んでもええよ、と抱き締める。
「せや。オカン帰ってこんうちに、風呂、一緒入ろか?」
「おっふろっ!?」
跳ね上がった真珠の顔は真っ赤。
「おふっろ、はっあのっちょっと」
ハードルが、とオロオロする様子に、ははっ!と笑って、そっと下ろす。
袖を摘む指先を包むように握る。
「わがまま言っていい?」
「だいたい、マコトがそういう時、わがままになってへんよな」
言うてみ、と手中の手を撫でる。
「バイオリン、聞きたいです」
「ええよ、なら、部屋行こか」
✜
父の書物を置いている部屋に寄った侑士は、部屋行こか、と漆黒のケースを持ってから私室に向かった。
思ったより小さい、とそれを見ていると、侑士の私室には同じケースの大きなものがもう一つあって、首を傾げる。
調律から戻ったという大きな方のケースを開くと、そこに収まるのは一挺のバイオリン。
真珠は口元にハンカチを当てて、綺麗、と溢した。
「こっちが、今、使てるやつ。
そんで」
侑士が開いた小さなケースにも、そのサイズ相当のバイオリン。
「なんてかわいいサイズ!」
その可愛さに、はわぁ、と目を奪われる。
「1/16っちゅうサイズで、いっちゃんはじめに持った一挺やねん」
「こんなかわいいサイズからあるんだ」
4/4サイズのバイオリンを手に取った侑士は、構えて指先で弦を弾き、調律の確認を始めた。
✜