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She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第35章 二人の音色



母に夕飯を作っておくと約束している、と言う侑士とスーパーに寄る。

「冷蔵庫に貰いもんのタラ、あるんよなぁ」
あれ早よどうにかせんと、と言いながら青果コーナーへ向かう。

「切り身やけど、アクアパッツァにするか」
焼いて野菜ぶっこんで煮るだけやし、とトマト、ナス、パプリカなどを選ぶ。

「高校生の作る料理じゃないでしょ、アクアパッツァ」
「結構簡単やねんで。
 魚と切った野菜、並べて煮るだけやもん」
「あと、冷蔵庫のものを踏まえて献立考えるのは主婦です」
「食材の買いもんてそういうもんやろ?
 使わないかんもんあるなら、足りんもん買うてつくる。
 基本やろ」
「ゆうって、結構お母さんっ子だった?」
「どうやろ?普通ちゃう?」
「頼りがいありすぎ」
「料理は任してもろてもええで?」

引っ越し、転校の多かった経歴を考えると、同世代の男の子に比べると母や姉との関係が親密なのは納得できる気がする、と青果コーナーのトマトを選んでいる横顔を見上げる。

「なんや、マザコンでもシスコンでもないで」
「そんなふうには思ってないっ!
 あ、んー、でも、恵里奈は気持ち、ブラコンかも?」
「どこがやん?」

優しゅうもない、と言う侑士。

「ファザコンも入ってるかも。
 お医者様で子ども二人とも私立に行かせて、和美ママが専業主婦になれるだけのお仕事されてるわけでしょう?
 加えて、氷帝で文武両道こなしてるゆうが弟として当たり前に身近にいるわけだから、男の子の理想は、きもーち、高めかな?とは思う」
「そうかぁ?
 むしろ、オトンと俺を見てきて、男なんやそんなもん、てなめとるからやろ」
「『そんなもん』のレベルが高すぎるのよ」

そんな事無いやろ、と苦笑しつつ、侑士は、あ、ズッキーニある、と野菜の選別を続ける。

「マコトは俺を買いかぶり過ぎや」
「そんなことない」

ある、と選んだ野菜を入れた籠を持ち替え、真珠の手を掴んで引き寄せる。
なに?と見上げる耳元に唇を寄せた。

「今日、姉ちゃん『お泊まり会や』て、帰ってけぇへんねん」
内緒話のように言う侑士。

「帰りたなったら、いつでも言うてや」
あ、う、と俯く真珠。

「無理はせんこと。ええね?」

こくり、と小さく頷くと、ええ子やね、と髪を撫でる侑士を見上げ、その大きな手をギュッと握った。

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