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She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第35章 二人の音色



ありがとうございました、という店員の声に、会釈をしてスポーツショップを出る。

「ラケットもたくさんあるんだね」

フレーム、ガット、グリップテープ、と初めての専門的なスポーツショップに並んでいたテニス用品に、真珠は感嘆した。

「前のラケットは、どうするの?」
「中等部に寄付しよか思てる。
 自分のラケット持たん奴もおるから、まだ使えそうなんは、備品として寄付するんや」
「なるほど。
 良き先輩ですね」
「せやろ?」
俺だけちゃうけど、と続けた侑士に真珠は笑った。

「寿命ってどのくらい?」
「2〜3年言うけど、使い方次第やんな。
 あと、やっぱり手に馴染まんようなったりする。
 特に俺らくらいの世代は」
苦笑気味の侑士。
「俺、中学の3年でトータル...15cmは背ぇ伸びとる」
「そうか、手も大きくなるよね!」
「握力も変わるし、早いと3カ月もせんうちに合わんようなった」

嘘、と真珠は目を見開く。

「成長、著しいっ」
「中学ん時一回、制服一式、買い替えとるもん」
まだ伸びる?と25cmほど上の顔を見上げた。
どうやろ?と私服の侑士は、メンテナンスしたラケットを入れたバッグを担ぎ直した。


「そや。バイオリン、戻ってきたで」
「ほんと?今日、聞ける?」
「ええよ」

調律に出していたバイオリンが返却されてきた事を知り、真珠は楽しみにしていたゆうのバイオリンだ、と満面の笑みを浮かべる。

「マコトは、ほんまに俺のこと、好きなんやなぁ」

え?と立ち止まった真珠に、なんや?と立ち止まる。

じっと見上げてくる目線に、しばらく考えた侑士。


「忘れてやっ」
「えっなんで!?」

アカン、と俯いて顔を背ける。

「めっちゃ恥ずい事言うたっ」
「えー?本当だからいいじゃない」

何言ってんねや、と空を仰ぐ侑士の腕に寄り添い、指先を絡め合う。

「だいすきだもん」
「...そら、おおきに」
あー、と結っていない髪を雑に掻き乱す。

「あーもう、ほら!こっち来てっ」

あちらこちらに跳ねた髪。

繋いだ手を引き、街路樹の根元に入ると、少し屈んで?と言われて大人しく背を屈めた侑士の髪を手ぐしで整え、いつも持ち歩くヘアゴムで低い位置に縛った。

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