She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第33章 過去の人
あらかた思い当たるところは捜したが見つからず、自席に座って考え込む。
(鞄に入れ...いや?手に持っとったか?)
挟んでいた本はある。
もう一度鞄を漁っていると、ゆーし?と顔を覗かせた向日。
「見つかった?」
なに失くしたんだよ、と教室に入ってくる。
「あ、侑士の靴箱になんか入ってたぜ」
今はそれどころやない、と上げた視線の前に、ほい、と差し出された栞。
「あった!」
「うおっびっくりした!」
席から立ち上がり、珍しく大声を上げた侑士に、ビビらせんな!と胸を押さえる向日。
「どこあってん!?」
「え?ああ、下駄箱の靴に差し込んであったぜ?」
これだったのか?と言う向日から受け取る。
「見つからんかったら、飛び降りよか思うとったわ」
「いやっどんだけ大事だよっ」
「俺の宝物なんや」
ホンマ良かった、と改めて本に挟む。
「しおりなのか?」
「せや。マコトと揃いにしとってん」
なるほどね、と向日。
「けど、なして下駄箱になんか入っとんや?」
「誰か拾ってたんじゃね?
なんか探してるゆーし見て、置いといてくれた、とか?
あ、落とした時にゆーしに渡せなくて、とかも」
「どこのどなたが知らへんけど、ホンマ、おおきに」
空に感謝を述べる侑士に、死んだやつに言っているみたいだぞっと向日が笑った。
「帰ろうぜ」
「ガクトもおおきにな、見つけてくれたん」
「まっ!当然だろっ」
「お礼になんや奢るわ」
「よっしゃあ!
じゃあ肉屋のおっちゃんとこの唐揚げなっ」
「何個でも買うたるよ」
「まじでっ!?」
やったぜぇ!と喜ぶ向日と向かった昇降口には、宍戸に寄りかかって寝る芥川もおり、結果、侑士は三人に唐揚げを奢ることになった。
「そんなに大事なもんなのか?それ」
「見つからんかったら、俺のすべてが終わるところやってん」
宍戸の問いにそう答え、大事そうに栞を見つめる横顔。
(((マコトちゃん/彼女か)))
目線を合わせた三人。
「俺、やっぱりいいわ」
胃もたれしそう、と宍戸。
「俺3つ!」
「俺...13個っ!」
「なして俺が芥川家の夕飯用意すんねん」
あそこの美味しいからさぁ、と笑う芥川。
僅かに射す夕日の光に煌めく栞を大事に本に挟み込み、よし、と鞄にあることを確認して帰路についた。
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