She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第33章 過去の人
今日、誘いを受けた友人と待ち合わせ場所の科学館前に着く。
「ねぇ、めっちゃ言いづらいんだけど」
その、と振り返る友人に、ん?と首を傾げる。
「さっき、忍足君、見かけてさ。
中、入っていったんだよね」
そんな偶然あるか?と入り口に掲げられている七夕物語がテーマの天体ショーのポスターを見る。
「その、女の子?人?と一緒に入って行った...」
ふーん、と返すと、それで?と聞く。
「昔の事だし。
それに、さっき書店で見たよ。
仲良さそうに本見てた。
デートじゃない?」
向日が言ってた彼女でしょ、と言う。
「気にしないならいいんだけどさ」
今更なにを、と笑って、行こ!と友人と受付へ向かう。
やはり、少しは気になって周りを見ていたが、見かけた影を発見することはなかった。
(そんなもんよね)
会場の出口前の物販コーナーに寄る。
(かわいいなぁ)
星座記号が象られたキーホルダー。
(そう言えば、忍足の誕生日って...
ん?何日だっけ?11...10月だった?
あれ?思い出せないや)
誕生日を知ってはいたと思う。
祝う前に別れてしまったから、もう覚えていない。
これにしよ、と自身の星座のキーホルダーをお土産にして天文館をあとにした。
✜
「天秤座、無いっ」
なんて天秤座だけ、と物販コーナーの陳列棚を睨む真珠。
「蟹座の買うたらええやん」
「ゆうのが欲しかったんだもん」
キーホルダーの陳列棚の前で、落ち込む真珠の頭を、残念やったなぁ、と撫でる。
星にちなんだ商品が多い土産物を見渡し、あ、と真珠の手を引く。
「これ、お揃いにしよか」
侑士が手に取ったのはブックマーカー。
合金で作られた羽根の先に小さなトンボ玉のような飾りが付いており、中に星座が描かれている。
「暗いとこやと、光って見えるんやって」
覗いてみ、とトンボ玉を手で包み込み、真珠に差し出す。
蓄光塗料による発光を見た真珠は、ホントだ!と嬉しそうに笑う。
「お揃いにしていいの?」
「俺から言うたんに、なして気にするん?
せや、マコトが天秤座使うてや」
「いいの?」
「俺が蟹座ん使う」
どの本に使おう、と天秤座のブックマーカーを嬉しそうに見つめる真珠。
目が合って、ん?と目線で問うと、一層嬉しそうに笑った顔に、繋いだ手を握り直した。
✜