She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第33章 過去の人
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(噂をすれば影がさす、とはよく言ったものだ)
友人との待ち合わせ前に、本日発売日の付録目当ての雑誌を探しに入った書店で見かけたのは元彼。
青いグレンチェックのホワイトカラーシャツとジーパンで、入り口近くの新書が並ぶ棚を眺めている。
(あれ?そういえば私服って初めて見た)
今更、と雑誌コーナーで「本日発売」と山積みされた雑誌を手に取る。
こちらに向かってくる気配に、え?と目線を向けると、後ろを通り過ぎて、同じ並びの棚の前で立ち読みしている女性の後ろに立った。
なにしてるんだろう、と横目に見て目を見開く。
見ていた雑誌をラックに戻して振り向いた女性の髪を撫で、微笑んでいる。
(あんな笑い方、するんだ)
隣に並んで、指を絡ませて繋いだ手を引き寄せると、耳元に口元を寄せて何か話している。
少し、彼を押し戻すようにして見上げる女性に、携帯を取り出すと、すぐにポケットにしまって彼女の手を引いた。
通路をこちらに向かってくる二人。
顔を背けるように背を向ける。
「『へびつかい座』てかっこええな」
低く聞こえた関西弁に、どこか、大人びていると言うか、達観しているような雰囲気のある彼が、年相応なことを言うのが意外だった。
「ゆうに似合いそう。へびつかい座」
「そうか?
インドとかにおるような、こういうやつやろ?蛇使い」
笛使うてさ、と、すぐ後ろを通り過ぎる。
少し先に向かう二人をほんの少し振り向いて見てみたが、こちらに気付く様子はない。
あまり表情豊かな印象がない横顔が微笑んでいて、あの頃よりも伸びた髪を肩の後ろに払う仕草をする。
「ゆう、髪、結おうか?」
「頼むわ」
最近、学校でも髪を結んでいたのは彼女の影響だったのか、と片手で癖っ毛を束ねている後ろ姿を見る。
伸びた身長も髪も、こちらに気づかなかった様子にも、自分が好きになった彼はもういないと示されたように感じ、2人に背を向ける。
彼女が見ていた女子大生からOLをターゲットとしたファッション誌の見出しは「春夏勝確着回しコーデ」。
手に持っている雑誌の見出しは「JK垢抜け計画!」。
かわいいキャラクター型のポーチが付録のそれを棚に戻し、トラベルサイズのコスメが付録の雑誌を手に、レジに向かった。
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