She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第33章 過去の人
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「それを姉ちゃんに相談するあたりがちょいアホやんな」
こん人やで、俺に黙っとるわけないやん、と読書していた勉強机の椅子で腕と足を組んだ侑士。
「それがかわええんやん」
「ん?それ、彼氏の俺側のセリフやろ?」
目にかかる生乾きの前髪をかき上げる侑士を、ラブラブやねぇ、と恵里奈はからかう。
でも、と本にしおりを挟む。
「女ん子って、普通は嫉妬するもんちゃうん?」
「そりゃ、関係性次第。
嫉妬する時もあれば気にもならない時もある」
「当人に『元カノやった』いう認識無い場合は?」
「なあ、結構えげつない事言うてるのわこうてる?」
え?ととぼけた顔に、こいつ、と苦笑いする。
「逆に考えてみ。
もしマコに元彼おったとして、ゆうちゃん、気にならへんの?」
徐々に刻まれていく侑士の眉間のシワに、ポーカーフェイスどこ行ってん、と吹き出す。
「不安にさせてしもうたかな」
「ゆうちゃんを責めるんやのぉて、そういう感情を持った自分を嫌悪するあたり、マコトもまだまだやなぁ」
「純粋培養やったんかってくらい、うぶなところあるからなぁ」
「はうっ!穢されていくっ」
「俺にかっ!?」
きっかけ作ったん自分やろ、と目にかかる前髪を払う。
「せやっ!お礼もろてへんよっ。
恋のキューピッドのお姉ちゃんに感謝の品はっ!?」
「いやっがめついキューピッドやなっ
今度、コーラとカルピス買うてきたる」
「その『キューピット』かいっ。
懐かしなぁ、こっちで見ぃひんね」
「大阪やとサ店の定番やのにね」
ていうか彼女おったんやね。と言った恵里奈に、一瞬やったし、と視線を反らす。
Pipipipiと鳴った侑士の携帯。
-真珠-の表示に、ちゃんと話したりよ、と立ち上がって部屋を出る恵里奈。
「話せて、どう言ったったらええねん」
言うだけ言って行きよって、と携帯に出た。
起きてた?と言う声はいつも通りに聞こえる。
-土曜日空いてる?-
土曜、とスクールバッグの手帳を開く。
「空いてんで」
-デートしてくれませんか?-
「そないな可愛らしお誘い、無理や言えへんやろ」
えー?と照れたようないつもの真珠の声に、戸惑いがあるようには感じない。
面倒ではない、と思う反面、ちょっとは嫉妬してくれてもいいのでは?という思いに(我儘すぎるな)と、天井を見上げた。
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