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She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第32章 いとこと過去の経験


授業や部活のことを話す侑士の脚の上で大人しく本を読んでいた。

(仲いいなぁ)

男兄弟がいないから特になのかな、と高校テニスがどうとか中学時代のルーキーたちがどうとか話している侑士と従兄弟のやりとりの中で頁を捲る。

「せや、謙也。
 お前、京都詳しいか?」
-京都?よお知らへんなぁ-
「ならええわ。ほな。腹出して寝なや」
-待て待て待てぇ-
おやすみ、と言った侑士は、なんやの?とめんどくさそうに返す。

-侑士が女ん子の話持ち出すとか、明日は絶対雨やん?-
「東京は快晴、関西一帯は...曇り。降水確率20%や」
携帯で天気予報を確認して告げる侑士に、にわか雨かもな、と謙也は笑う。

-なんがあってん?-
「なんもないで?」
-わかった!またフラれたんやろ?-

また?と見上げる真珠。

学ばん奴やなぁ、と言う謙也に、余計な事を、と悪態づく。

-言うたやろ?
女ん子はお姫様みたいに扱ったらなアカンて。
告られた、付き合うた。それからが大事やねん!
侑士、リアルの恋愛は映画みたいにはいかんのやで?
夢、見すぎやって!-
「...おやすみ。起きてこんでええで」
-『おやすみ』てそういう『おやすみ』かっ!?
永眠せえってか!?-
さいなら、と強制的に終わらせ、はあ、と頭を抱える。

部屋には、オーデオからわずかな音量で昭和歌謡が流れる。

沈黙を破ったのは、真珠だった。

「男の子同士の恋愛相談って新鮮」
「スマン、ほんまに。えらい気ぃ遣わしてもうて」
その、えっと、と珍しく目線が泳ぐ侑士。

「恵里奈は、『ゆうちゃんは女の子と付き合ったりしたことない』って言ってたけど、そうでもない?」
「いや、付き合うた、と言ってええんか...」
口籠る侑士は、隠し事したらアカンな、と諦めたように笑った。

「中二ん時、2ヶ月くらい、やったかな。
 一応、彼女やった子がおんねん」
「一応?」
「まともなデートも、キスもしとらんから、付き合うた、とカウントしてええんか怪しいけどな」
「なんで別れちゃったの?」
「『付き合うてる実感ない』て」

それはまた、と真珠は苦笑い。

「でも付き合ったならゆうも好きだったんじゃないの?」

どうやったんやろ?と悩み出した侑士。

「中学生だとそんなものかもね」

そう言った真珠を、侑士は抱きしめるだけだった。
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