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She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第32章 いとこと過去の経験



 ✜

帰宅後。
恵里奈の私室の前で侑士は、アホが、とため息をついた。

目の前の扉には、「天岩戸也」と書かれた紙が張り付けられている。

「てん、がん、とや??」
ん?と悩む真珠に、侑士が指先で『也』を隠す。
「『あまのいわと』ね。『天の岩戸、なり』」
なるほど、と言って、開けるなってこと?と隣の侑士を見上げる。

「うち、部屋に鍵、無いからな」
開けたろ、とノックもせずに手をかけたドアノブが、ガッ!と引っかかる。
ん?と強く押すが、扉は開かない。

「わざわざバリケードしとるんかいっ」
椅子か?と僅かに開いた扉を覗くが、部屋の中は暗く見えない。

「やり方がアホすぎるやろ」
もうええ、と扉を閉め、隣の自室に真珠の手を引いて入る。

「恵里奈、かわいいね」
気を遣ってくれてるんだろうけどやり方が違うような、とおかしそうに笑う真珠。
入った自室には、ご丁寧に真珠の荷物が置かれていて、勝手に開けよったな、と隣の姉の部屋の方を睨む。

「ゆうの部屋って、散らからなさそう」
本出しっぱなしとか見たことない、と部屋を見渡す真珠。
「もの、少ない方ちゃうけどな」
結構持ちモンある、とベッドに腰掛ける。
「レコードも楽譜も、綺麗に整理してるもんね」
「なんや聞く?」
いい?とレコードラックの前にしゃがみ込む。

「そこらへん、最近買うたのあるで」
「こっち?」
逆、と真珠の背後に立ち、左側のラックから何枚か取り出す。
「わっ、明菜ちゃん増えてる」
「好きなんやろ?」
「むっちゃ好き!
 この可愛さから出るかっこいい声のギャップのたまらないっ」
「可愛らし声やけど、大人ぶった感じに歌うん、似合うよな」
「サザン・ウインドとか禁区とかねっ」
「あ、『禁区』あんで」
流そか、とパッケージから取り出す。

「♪私からさよならしなければ〜」

本人に似せて歌う真珠に、似とる、と笑う。

しばらく二人、レコードを聴きながら本を読んだり、他愛もない話をしているうちに、月は高く登り、夜の帳はおりていた。

 ✜

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