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She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第32章 いとこと過去の経験


定期テストに向けた自習用のノートで古文の現代訳をしていく。
出題の文章に「まこと」と見つけ、副詞や感動詞としても出てくるな、とノートに記す。

コンコン、とノックの音に、おんでー、と返事。

「勉強中?」
扉から顔を覗かせた真珠は、デスクの資料やノートに偉いねぇ、と微笑む。
「恵里奈とコンビニに行くけど、欲しいものある?」
せやな、と時計を振り返ると22時前。

「一緒、行ってええ?」
「うん」
行こう、と微笑む真珠に、席を立つ。

「眼鏡はいい?」
「ええよ」
恵里奈、行くよ〜?と隣の部屋をノックする。
はいはーい、と出てきた恵里奈は、廊下で待つ侑士に気づいた。
「二人で行ってきや」
お邪魔虫やろ、と恵里奈は手にしていた財布から侑士に千円札を押し付ける。
「カップのキャラメルラテと、なんや適当にお菓子買うてきて」
「気ぃ遣ぅたふりしたパシリやんか」
ええけどさ、と受け取った侑士に、恵里奈は、バレたかっ!と笑った。

 ✜

「恵里奈がキャラメルラテって言うなら、フ◯ミ◯かな」
あれ、いつも買ってるし、と言う真珠と夜道を歩く。

春から夏に変わり始めている夜風は少し湿っている。

「マコト」
隣を歩く真珠の左手を握る。

「将来んこと、どう考えとる?」
侑士を見上げる視線を前に向けると、そうだね、と手を握り返した。

「学校司書の資格も取るつもりなの。
 だから、どこか資料館や私設図書館、後は私立学校の司書教諭の職に就けるといいかな。
 公立学校の司書教諭は異動があるから、できたら私立の学校がいいな、と思ってる」
「そうか」
少しゆっくりと歩く侑士の歩調に合わせる。

「あんな、真珠」
立ち止まった侑士に歩みを止める。

「俺が、医者なるまで待ってくれ、言うて、待ってくれるか?」

月明かりに照らされる顔を見上げる。

「医者なるしたら、まともに養ったれるまで、今からでも10年近くある。
 3年後、高校出てそっから6年は学生で、大学、ストレートで出ても2年間は研修医や。
 長いこと、真珠ん事、待たせてまう」

せやから、と目線をそらした侑士。

「えっと」

真珠の声に少し身構える。

「『待ちたい』って言ったら、困らせちゃう?」

首元にも届かない頭を抱き寄せて、背中を撫でてくれる真珠をきつく抱きしめた。

 ✜
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