She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第32章 いとこと過去の経験
あっつ、と風呂から上がってリビングに戻ると、恵里奈と真珠はまだ携帯や雑誌とにらめっこしていた。
「巻く?」
「うーん、やっぱり降ろさないでまとめ上げちゃいたいかも」
「なんやっけ?半襟?重ね衿?
首元をさ、ちょい派手めにするんはどう?
簪の色味と合わせるんは?」
「そうなるとやっぱり差し色で赤かな?」
「せや、あえて黒は?
マコト、髪色暗めやから、ラメとかビジュー付きの黒の髪飾でシックに纏めるんもかっこええと思う」
なるほど、と自身の髪の毛先を摘む真珠の背後のソファに座る。
「おかえり」
「ん。なあ、また髪、やってや」
洗面所から持ち出したドライヤーと櫛を見上げてくる真珠に差し出す。
「いいよ」
交代、とソファの下に座り、首にかけていたタオルを取る。
「ゆうちゃんがドライヤー使うの、幼稚園以来見てないな」
「この長さでドライヤー使わないということに衝撃だったんだけど」
恵里奈の言葉に少し笑い、温度と強さを確認した風を侑士の髪に当てていく。
「ゆうちゃん、めんどいて乾かさんと本読み出すから、寝る頃にはもう乾いとるんよね」
見てるこっちが寒い、と恵里奈は呆れた目を向けた。
「今日、どうするん?」
乾いた髪に櫛を通してもらった侑士が、帰る?と見上げる。
「今日は私とパジャマパーティやねん」
邪魔せんといて、と言う恵里奈。
「俺の彼女なんやけど」
「先にあたしの親友やっ」
「ずっと構ってもろうとったやん。
夜くらい譲ってや」
「わっ、やーらしーんだ!
マコ、逃げやっ。オオカミおんで」
きゃー、と抱きついてくる恵里奈にクスクスと笑う真珠。
「せやで。
男はみーんな狼やから、変なのに捕まらんときや」
フッ、と笑った侑士。
「マコっ、危険やっ!
今日はお姉ちゃん部屋に泊まりやぁ」
「わかった、恵里奈お姉ちゃんっ」
守ったるで!と寸劇をする二人に、なんやそれ、と笑ってドライヤーと櫛を手に立ち上がる。
「おおきにね」
うん、と微笑んで見上げる真珠の額にキスをする。
驚いて固まる真珠を抱き寄せたのは恵里奈。
「オオカミやー!オオカミがおんでーっ
食ーべーらーるーっ」
「ご近所迷惑や」
逃げて〜!と騒ぐ声に笑みを零した侑士は、ごゆっくり、と二人をリビングに残して私室に向かった。
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