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She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第32章 いとこと過去の経験



「ただいま」

帰宅後、私室で着替えてからリビングに顔を出すと、母は夕飯の支度をしながら笑っていた。

「あ、おかえりなさい。
 侑ちゃん、帰ってきました」
瑛士さんよ、とタブレットの画面を向けられたが、プイッと顔を背ける。

-おうおう、へそ曲げとるな-
苦笑の父に挨拶もせず、キッチンに背を向けるソファに座る。
「侑士」
いつも、『侑ちゃん』と呼ぶ母に、おいで、と手招かれ、しぶしぶ食卓につく。

「マコトちゃんの話をしてたの」
チラ、とタブレット画面の父を見る。

「瑛士さん、侑士、マコトちゃんのこと、大好きなんですよ」
「余計なこと言わんでええんよ」

溜息をつく侑士の腕を掴む母。

「でも、好きだから、結婚はしたくないんでしょう?
 いいの?マコトちゃんとは、いずれ別れちゃうの?」
「そ、れは、」
うん、と腕を解いて、席を立った母。

「医者なるために他ん子と結婚せぇ言うなら、俺は、医者ならへん」

驚いた顔の父から目を逸らさずに続けた。

「前ん俺やったら、面倒や思うて『そん子でええよ』言うてたと思う」
-侑士、-
「真珠とおって、いろんなこと、知ったんや。
 酒造りのこととか、図書館のしくみとか。
 真珠とおると、今までそこにあるだけやったもんがおもろいんよ。
 映画やて、一人で見るより気付くこと多かったり、おんなし本読んでも、着眼点ちゃうくて、それがおもろくて...
 一緒おる時間が、むっちゃ好きなんよ」

言い切った侑士に、キッチンの母は満足そうに笑った。

「結婚したら医者んなれる。
 せぇへんかったら、医者なられへん。
 『どっちか選べ』言われたら、俺は後者でええ。
 真珠とおりたいから。
 後悔は、せぇへん。
 そんくらい、大切やから、大事にしたりたい」

一息ついた。

「氷帝の医学部行って、研究医なろ思てる」

はっきりの進路を自ら告げたのは、初めてだった。

「ドイツには行かへん。
 やから、今後、オトンのツテも当てにせんて約束する」

やから結婚は堪忍してください、と侑士は頭を下げた。

-侑士、-

驚いた父の声に、ゆっくりと頭を上げる。

-彼女ん事、大好きなんやな-

柔らかく笑う父から目を逸らす。

「せやなかったら、告白もせぇへんわ」
-ゆうちゃんから告白したんか?-

あかんの?と言った侑士の顔が少し、赤かった。

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