She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第4章 セカンドチャンス
はい、と渡されたドリンクカップを、おおきに、と受け取る。
「奢ってくれたの、侑士君なのに」
変なの、と笑って隣に掛けた真珠。
飲食カウンターで払う、払わせないの押し問答をして、じゃんけんにしよ、と言った侑士に勝った真珠は、奢られたドリンクを一口飲んだ。
「紅茶、好きなん?」
この前も紅茶やったな、と受け取ったアイスコーヒーにガムシロップを垂らす。
「コーヒー、苦手なの」
そう言って、ストレートの紅茶をホルダーに入れる。
「お子ちゃまやん」
「ひどーい」
冗談やて、と笑っていると、すいません、と前を人が通る。
通りやすいように脚をずらした真珠。
横に歩きながら前を通る人に触れかけた真珠の膝を、侑士が引き寄せた。
すぐに手を離した侑士は、どしたん?と首を傾げる。
「ううん。なんでもないの」
触れた手の温かさや大きさに、(男の人だなぁ)と座り直す。
えっと、と上映までの時間の話題を探す。
「あ、その、ちょっと気持ち悪いお話していい?」
「『気持ち悪い話』?いやや」
あ、はい、と口を閉じた真珠に、冗談や、と言って、何やん?と聞き出す。
「侑士君って、テニスのすごい選手だったんだね」
「そんなこと、あらへんよ。
なして、そんな話...」
えっと、と口籠る真珠。
「恵里奈、に...『ゆうちゃんの事、テニスで調べて見て。百聞は一見に如かず』って言われて、ちょっと侑士君のこと調べ、ました
あのっ、本当、気持ち悪いよねっ
すいません...」
いくらか瞬きをした侑士。
「ごめんなさい」
謝る真珠に、ちゃうよ、と身体を向ける。
「そんなん、思ってへん
調べてくれたって、どんな事?」
何や変なことしてへんかな、と考え込む侑士。
「えっと、あっ小学校の時かな?ジュニア?では大阪で有名だったんだね!」
そんな事あらへんよ、と少し恥ずかしくて眼鏡の位置を整える。
「プロの雑誌にも特集記事があったし、氷帝ってテニス強豪校でしょう?
そこで、シングルスもダブルスもレギュラーってすごいね」
「なんや、めっちゃ照れるわ」
恥ずい、と照れ笑った侑士。
「侑士君、クールなイメージ強かったけど、笑うとかわいいね」
あとね、と続いた真珠が読んだというテニス雑誌の話は、一切が侑士の頭には入ってきていなかった。
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