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She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第31章 策略



「堪忍なぁ」
傷入っとる、と侑士が拾った携帯と手帳を取り替えるように渡し合う。

「いいよ、いつもそんなに大事に使ってるわけじゃないし」

ごめんね、と受け取った携帯の画面は08:50。

「あっゆう、授業っ」
体育?と見上げると、結んでいた髪が解かれている。
「解けちゃった?」

緩かったかな?といつもの髪型の侑士を見上げる。

「朝練で解けてん。
 また、結うてくれるか?」
コレ、と今朝のゴムを渡され、いいよ、と鞄を肩にかける。

「さっきと同じでいい?」
「結える分、全部括ってしもてええ」
じゃあ、と段の下の方の髪をまとめて、今度は少しきつめに下部で縛る。

できた、と広い背中をポン、と撫でる。

「ん、おおきに」
「授業と部活、無理しないようにね」
「行ってくる」
「いってらっしゃい」

小さく振る手を取り、ちゅ、とその甲にキスをする侑士。

後で連絡入れる、と軽く手を上げて校舎に向かう背中。
結った髪が揺れる後ろ姿を、見えなくなるまで見送って、バス停へと歩き出した。

 ✜

真珠から受け取った学生証を開く。

(少しは予防線になればええんやけど)

ふむ、と閉じたそれをハーフパンツのポケットに仕舞い、1-理Gの体育が行われる第三体育館へ向かう。

運動用の室内履きに履き替えてコートに入ると、タイミングよく集合の号令が掛かった。

「あれ?また結んでる」
チーム分けされ、同じ待機組の向日の隣に座った。

「位置変えた?」
「まあな」
見慣れねぇなぁ、と笑う向日。

「忍足っ」
目の前に立った同級生を見上げる。

向日と反対側に座ると、にや、と笑った。

「授業抜け出して逢引か?」
そんなんちゃう、と始まったコートの試合を眺める。
なんの話だ?と聞く向日に、こいつさぁ!と意気揚々話し出す。

「トイレとか言って抜け出して、門のとこで女と会ってんだぜっ」
「女?」
それってマコトちゃん?と聞かれ、ん、と頷く。
「忘れもん、届けてもろただけや」
ポケットから取り出した学生証を見せる。

「髪、その女に結んでもらってたぜ」
そういうことだったんですか?忍足さん、とニヤつく彼に、どうことやねん、と呆れ声を返す。

いいなぁ、彼女。と言う彼。

「作ったらええやん」
「『作ろう!』でできたら苦労しねぇよ!」
苦労してるんや、と返すと、腹立つなぁ!と睨まれた。

 ✜
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