She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第31章 策略
侑士を見送り、バスに乗り直す。
「あれ?」
大学最寄りのバス停に近づき、バッグから取り出したのは、いつものライトベージュの定期ケースと濃紺の手帳。
『氷帝学園』の文字と校章が箔押しされた表紙を開き、あちゃあ、と項垂れる。
(ゆうの学生証...)
さっき、と顔を上げる。
(髪結ぶ時、紛れちゃったんだ...)
櫛だのゴムだの出してたから、とため息をつき、降りたバス停で携帯を取り出す。
-ごめん!学生証、紛れちゃったみたい!-
表紙の写真を添えて送る。
「朝練、始まってるよなぁ」
学生証、使うかな?と考えて、そう言えば、と思い出す。
購買と学食、コレで決済できんねん
(そうだっプリカ機能あるんだった)
まずいっ、と戻るバスに乗るべく、大学に背を向ける。
(どうしよう。
ゆうの1限目に間に合うかな?
それか、落とし物として事務室に届ける?)
この際、講義は後で同期にノートを見せてもらおう、と携帯を手に、バスを待つ。
バスに乗り込んで少しすると、侑士からメッセージが届いた。
-気づかへんかった-
ごめん、と謝る黒い犬のイラスト。
-今、氷帝に向かってるんだけど、受け渡しできそう?-
そう混み合っていない道に、20分くらいかかる、と伝えると、門前についたら連絡をいれるよう言われた。
(8時半とかから朝礼?朝会?
9時から1時間目として...その間ならなんとかなる?)
いつも侑士が降りるバス停で降り、早足に氷帝学園へ向かう。
(間に合うかなっ)
8時45分を過ぎている時計に、急げ、とヒールが鳴る。
手に持っていた携帯に着信があった。
-マコト、今、どこや?-
「バス停っ戻って!今、はぁっ、門に!向かってる、所!」
日頃の運動不足が祟り、そう距離のない小走りなのに、キッツ、と息が上がる。
「ハァハァ、門っ見えた!」
-走らんでええって!こけるで?-
ふぁい、と情けない返事をし、もう少しだから、と早足に向かう。
「あっ」
-「マコトっ」-
ガク、と崩れた足元に目を閉じる。
カシャン、という音ともに、トスッ、と受け止められた。
「セーフッ」
「ほぼアウトやって」
いつも見る部活のウエアではない、運動向けのセットアップの侑士が苦笑いで立っていた。
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