She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第31章 策略
大学、間に合うから、と氷帝学園高等部最寄りのバス停で一緒に降りた真珠。
「ゆう、髪伸びたね」
見上げる真珠に、そやね、と癖のある毛先を摘む。
「切らないの?」
「切ってもどうせ伸びるしなぁ」
切りすぎるとまた跳ねるし、とレイヤーカットの髪の毛先を手で束ねてみる。
「髪の量、多いよね」
「子どもんころからや」
「結んでみる?」
最近暑いし、と真珠は、バッグのポーチからヘアゴムを取り出した。
バス停のベンチに侑士を座らせ、折りたたみの櫛を髪に通す。
「上げるほど長さはないかなぁ」
俯くと降りてくるサイドの髪を、耳の高さより下の方で纏める。
「ここでいい?」
「ん」
10センチほどの長さの毛束に、似合うね、と真珠は笑う。
「セーラーカラーのシャツ着せたい」
ボーダー希望、と言われ、持ってへんよ、と立ち上がる。
「解けちゃったら、手先の器用な子にしてもらってね」
「思い当たるやつがおらんなぁ」
誰やろ、と考えながら学校方面に二人で歩き出す。
「いってらっしゃい」
「行ってくる。マコト、気ぃつけや」
昼に連絡入れるわ、と頭を撫でて学校に向かう背中を見送る。
朝練生だろう。
始業には早い時間に登校してくる学生が、おはようございます、と挨拶をして学校へ向かっていく。
手を繋いで門をくぐる男子学生と女子学生がおり、青春だなぁ、と微笑ましい。
(憧れたなぁ、制服デート)
女子高だったので友人の恋人たちは皆、他校生。
相手の制服のネクタイをつけたり、上着のボタンの一部を取り替えたりするのが流行っていた頃が、懐かしい、と一人笑う。
(今の子達もするのかな?)
どうなんだろう、と登校する生徒たちの流れに逆らい、バス停までゆっくりと戻った。
✜
「ゆーし、髪結んでる」
初めて見た、と朝練に来た向日が言った。
「暑いからな」
「切ればいいのに」
まあそうなんやけど、とラケットを手に取る。
「マコトちゃんに結んでもらったとか?」
無言でロッカーを閉めた侑士に、ビンゴ!と笑う。
「ゆーし、お前っ結構わかりやすいのなっ」
ケラケラ笑う向日に、しゃあしぃわ、とコートに向かう。
「昔の宍戸みてぇ」
する、とゴムを解いた侑士に、嫌なのかよ、とより笑う。
(髪、切るかな)
どうしようか、と侑士はしばらく悩んでいた。
✜