She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第31章 策略
✜
いってきます、と忍足家を出る。
「いってらっしゃーい」
気をつけてねー、と見送る和美に手を振り、門を開けて待つ侑士の元へ向かう。
「大学、間に合うか?」
「うん」
ならええけど、と制服でラケットバッグと通学鞄を持つ侑士と手を繋ぐ。
「ゆうは、無理しないようにね」
わかっとるよ、と頷く侑士と並び歩く。
「でも、今日から校内選抜でしょう?」
「せやけど、俺、出るん来週からや」
交差点を曲がり、車道側に移動する。
「1年ん中である程度実力あるて認められた奴は、2,3年の二軍、準レと総当たりして7割勝たなリストに載せてもらえへんのよ」
「え?総当り?全員?」
「二軍のな」
「なん軍まであるの?」
「五軍まであんで。
三軍から五軍までの選抜に勝ったら入部。負けたら仮入部。もっかいやってそこで勝てん勝ったら退部。
今年はストレート入部多かったみたいやさかい、レギュラー選抜前に篩に掛けられてん。
二軍のコーチが見て、残った奴が校内選抜に出られる」
「道程が長いっ」
「ウチ、人数多いからなぁ」
「200人くらいだっけ?」
「今、正式に残っとるんはそんなもんちゃう?
5月の仮入部時点で1年が120おったはずで、入部テストで残ったんがたぶん、8割とかやろ。
2,3年で進級落ちした先輩らもおるから...」
「『進級落ち...?』」
聞き慣れない言葉に、それも校内試合で決まるんやけど、と侑士とバス停の列に並ぶ。
「1年の仮入部員が決まったら、二軍以下の2,3年はその面子と戦って、負けたら『進級落ち』言うて退部になるんや。
負けた1年も入部取り消される」
「その一戦で...?」
「いちおう、敗者復活戦あんねんけど、そこから復活したやつおらへん聞いとる」
侑士の言葉に、ということは...と改めて見上げる。
「ストレート入部で篩掛けにも残ってる?」
「やないとこれ、持っとらんやろ」
氷帝学園高等部テニス部と刺繍がなされたラケットバッグを掲げる。
「裏を返せば、勝てば1年でも試合出れるんや」
「っそうなのか」
「今まで高等部で1年レギュラーはおらんかったみたいやけど、今年はどうやろうなぁ」
眼鏡の位置を正した侑士。
「取りに行く気満々ですね」
「久しぶりに『取らなあかんもん』やからなぁ」
落とすわけいかへんやろ、と少し伸びた襟足の髪を払った。
