She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第31章 策略
浮き上がった意識に瞬きをする。
照明が消え、カーテンが閉め切られた私室で、なんとなく夜の時間帯だろうとは思う。
寝返って、ケータイ、と探すと背後の枕元に置かれていて、画面の明るさに顔を顰める。
23:10。
変な時間に起きてしまった、と目を擦りながら画面を開くと、テニス部からメッセージが大量に届いていた。
(明日でええか)
跡部や向日、宍戸からの体調を気遣うメッセージは確認せず、真珠とのやりとりを開く。
恵里奈の部屋にいます
そのメッセージは夕方のもので、もう帰っただろう、と携帯を放り出して体を伸ばす。
(風呂、入ろ)
ふう、と籠もるマスクを外し、部屋を出る。
リビングにまだ電気がついていて、顔を出すと、一人、母がいた。
「あら、起きたの?」
「風呂、入る」
「大丈夫?」
うん、と水を一杯飲み、風呂行ってくる、とUターン。
「マコトちゃん、えりちゃんの部屋にいるよ」
母の言葉に足を止める。
「ゆうちゃんのこと、心配そうだったら、泊まっていったら?って引き留めたの。
さっき、飲み物取りに来てたから、まだ起きてるんじゃないかな?」
えりちゃんに聞いてごらん、と言われ、あとで、と浴室に向かう。
長風呂して熱がぶり返してもな、と、サッとシャワーで済ませ、玄関先を確認すると、確かに真珠のものと思われるヒールがあった。
部屋に戻り、真珠に電話を掛ける。
-もしもーし?-
優しい声に、笑みが溢れる。
-痛むところ、無い?-
「ん、さっき、風呂入った」
-あ、じゃあやっぱりゆうだったんだ-
物音したから、と言う真珠の声に、とベッドに座る。
「姉ちゃんの部屋?」
-うん。眠れそう?-
どうやろ、と少し笑う。
横になるだけでも違うよ、と言う少し控えめな真珠の声。
「なぁ、もしかして姉ちゃん、寝とる?」
うん、と返事。
-やっと課題が終わって、疲れた、って-
「なんしよったん?」
-持ってた本、読んでたよ-
さよか、と首筋に触れる手に少し湿った毛先が当たる。
(こっち来て欲し、言うてええんか...)
どうしようか、と悩んでいると、ねえ、と優しい声。
-顔、見に行ってもいい?-
少しと置かずに、うん、と頷いた。
-ちょっと待ってて-
切れた電話を手にしたまま、ボスッ、とベッドに倒れ込んだ。
✜