• テキストサイズ

She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第30章 姉と恋人


ノックの後。ゆうちゃーん?と呼んだのは恵里奈。

寝てるよー、と言う真珠の声に、入んでー?と扉を開ける。

「頭撫でてたら、寝ちゃったの」

真珠の膝を枕に寝息を立てている侑士。
さっき外したメガネを、そっちに置いといてあげて、と恵里奈に渡す。

「朝より顔色ええわ。
 目に覇気無かってん。
 いつもある方ではないけど」
「えー?」
なにそれ、と真珠は笑う。

「年に1回くらいかな?こうしてダウンするんよ」
「体、強くない?」
「そんなことないと思うねんやけど、体質?
 季節ん変わり目は体調崩しやすい、みたいに、普段何ともないんに、たまーにぐったりしてまうんよ」
「いつも頑張りすぎなんだろうね」

学校とテニスと忙しいよね、と穏やかに寝息を立てている侑士の柔らかい髪を撫で梳く。

「瑛士パパとのこともあったし、いろいろ考えて、疲れちゃったんだろうね」

お疲れ様、と慈悲に満ちた笑顔で侑士の髪を撫でる真珠に、なあ、と少し声を潜めて恵里奈は声を掛けた。

「ゆうちゃんから聞いとる?
 その、パパと海外交流に来る女ん子のこと」
「さわりは」
「ゆうちゃん、なんて言うとるん?」
んー、と侑士の寝顔を見下ろす。

「曰く、騙された、仕組まれてたって」
「まあ、そう思うてもしゃーないわなぁ」
「医学の道に進もうとは思ってる。けど、結婚はしない、って」
「ゆうちゃん、パパに怒鳴っとってん」

怒鳴ってた?と恵里奈の言葉に驚く。

「迷惑やぁ言うたゆうちゃんに、パパ、『何のために氷帝行かしとる思っとるんや』て言うたんよ。
 けど、『医者なるためだけに友達選んどらん』。
 マコんことも、『医者なるため好きになったわけちゃう』って怒鳴りかえしよった」
私、ゆうちゃんがあないに感情的になっとるの初めてみた、と侑士の鼻先を擽る恵里奈。

んんっ?と顔を顰めた侑士に、やめてあげなさい、とやんわり恵里奈の手を払うと、彼女に背を向けるように寝返る。

そっか、と真珠が、寝かしつけるように侑士の背中を優しく叩く。

「ゆう、長男だもんね」
「末っ子長男姉一人やね」
「昔、母が見てたドラマにそんなのあったような...」

そうなん?変なタイトル、と笑う恵里奈としばらく2人でおしゃべりを楽しんだ。

 ✜

/ 311ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp