She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第30章 姉と恋人
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自室に戻ってベッドで寝ていると、遠くで何か聞こえた気がして、耳を澄ませる。
誰かと電話しているような母の声に寝返る。
指先が枕元の携帯に当たり、画面を開く。
-ゆーし?生きてるかー?-
時間を見ると16時45分。
向日からのメッセージは16時過ぎの受信。
部活の合間に送ってきたんだろう、とメッセージアプリを開くと、昼過ぎに真珠からもメッセージが来ていた。
-病院行けた?-
行ったで、と返信を打つ。
(声、聞きたい...)
コールしようとして、今日はアルバイトの日だと気づく。
勤務が終わっているか微妙な時間に、メッセージで病院には行ったことを伝えると、ゆっくりと起き上がり、壁際に凭れ掛かる。
母が置いて行った体温計で計測すると、平熱に下がっていた。
発熱後のだるさが続くのは体質で、ダル、と体温計をデスクに置くと、そこにはグラスとピッチャーがあった。
母が作るレモンの経口補水液をグラスで一杯飲む。
(久しぶり、飲んだな)
風邪を引いた時の味、とグラスに半分継ぎ足して飲む。
コンコン、と部屋の扉がノックされた。
母だろう、と返事もせずに扉を向かう。
「あら、起きてた?」
さっき起きた、と目を擦る。
「マコトちゃん、来てくれたけど、会う?やめとく?」
顔を上げると、顔色良くなったわね、と額に触れる母の手。
「お熱も引いたみたいね。
お通しするけど、いい?」
うん、と部屋に戻ると、さっき起きたベッドの布団はくしゃくしゃで、少し汗をかいた寝間着のままであることに気付き、慌てて布団を整えてシャツを取り替えた。
再びノックされた扉。
念の為、デスクに置いたままだったマスクをつけて、ええよ、と返事をする。
ゆう?と顔を覗かせた真珠も、マスクをしていた。
「和美ママが、うつるとゆうが気にするから、って」
そう言って、マスクを指す。
「具合、どう?」
心配そうな顔に、熱下がった、とベッドに腰掛ける。
「ごめんね、学校行事とか部活とかで忙しいのに、お休みの日も連れ出したりしてたから」
「マコトのせいちゃうよ」
そういう時もある、とまだ扉のところにいる真珠に腕を伸ばす。
「入らへんの?」
扉を閉め、歩み寄ってきた真珠を腕の中で抱きしめた。
「熱、引いた?」
額に触れる手に、気持ちええ、と目を閉じた。
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