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She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第30章 姉と恋人



 ✜

お大事に、と渡された処方箋を手に、隣接の調剤薬局に寄る。
小児科ではアセトアミノフェンを貰っていたが、今回処方されたのはロキソプロフェンだった。

こんなところで自身の成長を感じるとは、と薬局で処方を待つ。

端の方のソファで、壁に寄りかかりながら座る。

「タクシーお願いしてくるから」
足りるはずだから、と幾らかの紙幣を預け、外に出た母。

番号で呼ばれ、よろよろと立ち上がろうとすると、掛けてお待ち下さい、と薬剤師がトレーを手に待合スペースまで出てきた。
手帳と保険証を確認して受け取り、薬の説明を受ける。
若い、女性の薬剤師の声が真珠とよく似ていて、はっきりとしていない意識が尚更ぼんやりしてくる。

(会いたい、)

はよ治さな、と考えていると、あの...?とどこか戸惑った声。
疑問点や質問はございませんか?という問いかけに気づいていなかった侑士は、すんません、とマスクの位置を整える。

「ありがとうございました」

領収書と釣り銭を受け取り、薬局を出ると、タクシーと母が待っていた。


薬飲んじゃいなさい、と母がくれたペットボトルの水で錠剤を飲み下す。

目を閉じてシートに沈んでいると、あら、という母の声。

「マコトちゃん?」
「え?」

薄く開いた目で、あそこ、と母が見やる先に目を凝らす。

少し先の角を曲がれば自宅、というところ。

忍足家は真珠の自宅と大学の間の立地にあるが、なぜ、と追い越した車窓を振り返る。

「停めてもらう?」
でもねえ、と侑士の姿に母は、どうする?と聞いた。

「ええよ」
自分に用事があって来ているとは限らない。
それに、と少し咳き込んで、車窓に映る、発熱で涙目になっている瞳で瞬きをする。

(情けないとこ、見られた無い...)

マスクの位置を上げ、目を閉じる。

 ゆう

いつも不意に頭を撫でる真珠の柔らかな手の感触を思い出し、(はよ治そ)と、ひどく冷たく感じる水を一口、飲んだ。

 ✜

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