She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第30章 姉と恋人
朝食はカップスープだけで済ませ、解熱剤を飲んでリビングのソファでブランケットに包まる。
(病院行ったがええんかな)
氷帝学園の在籍者用連絡フォームから欠席の旨登録し、テニス部のグループメッセージに、今日休む、とメッセージを入れて、ズキズキと痛む頭に目を閉じる。
「侑ちゃん、」
母の声に、ぼんやりと目を開ける。
「具合どう?」
「あんまよぉない」
少し掠れた声に、どんな?と額に触れる母。
「頭痛い?」
ん、と小さく頷く。
「お腹は?」
んーん、と首を振る。
「関節は?」
「膝、痛い」
洗い物でもしていたのだろう。
首筋に触れる母の手が思いのほか冷たくて、ん、と身動ぐ。
「腫れてはなさそうね。
もう高校生だもんね。
いつもお世話になってる小児科より、内科の方がいい?」
確かに小児科はちょっと恥ずい、と頷く。
「動くん、だるい」
「タクシーで行きましょう」
病院に連絡するから待ってて、と言われて目を閉じる。
少し、胃にものを入れてから飲んだからか、薬が効いてきて、うつらうつらしだす。
侑ちゃん、という声に目を覚ます。
「病院、行きましょう」
うん、とゆっくり起き上がる。
「痛い、」
両方のこめかみを押さえ、うー、と低く唸る。
「着替えておいで」
うん、とのろのろ立ち上がり、セットアップのジャージに着替え、上着を羽織る。
ゆっくりと玄関でつっかけを履き、母に渡されたマスクを耳に掛け、玄関先に止まるタクシーに乗り込む。
母がタクシーの運転手に伝えた内科病院まで、サイドウインドに凭れかかって、眉間にしわを寄せて目を瞑る。
「大丈夫よ。
先生に診てもらって、お薬もらえば楽になるわ」
そう言えば、小さい時から体調を崩した時に、母はいつもそう言っていた。
「帰ってきたら、レモンの経口補水液、作りましょうね」
自分や姉が熱を出すと、「市販の物は糖が多すぎるから」とレモンと塩と砂糖で手製の経口補水液を作ってくれる。
(そういや、最近飲んでなかったな)
そう思うと急に恋しくなってきた。
車の揺れに眠気を誘われ、うつらうつらし出した頃、病院についた。
✜