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She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第30章 姉と恋人



おはよ、と眠い目を擦りながらリビングに入る。

「おはよう、ゆうちゃん」

母の挨拶に、ん、とだけ返して、ダイニングテーブルの椅子ではなく、リビングのソファに寝転がる。

「ゆうちゃん?」
どうしたの?と様子が違う侑士に寄り、お熱?と母は額に触れる。
「あら、ちょっと熱い」

やっぱり発熱していたか、と目を閉じる。

昨夜、そろそろ寝よう、と真珠とメッセージのやり取りを終えた携帯を充電器に繋ぎ、読みかけの本に真珠がくれた栞を挟んでベッドに入った時、少し頭痛がした。
字を追い続けていたせいだろう、とあまりに気にせず眠りについたが、あまり寝付けず、朝方、もうあまり冷え込みを感じない季節になったというのに寒気がした。

「お熱、測って」

母が差し出した体温計を受け取り、目を閉じる。

おはよ、と珍しく早起きの姉。

なにかを探すように部屋を見渡す。

「あ、ゆうちゃん、いた」
どしたん?とソファの背もたれから覗き込む。
ちょうど計測が終わった体温計を見た侑士は、顔を顰める。

どれどれ、とそれを恵里奈に奪われた。

「37.2℃。
 高い体温ちゃうけど、ゆうちゃんの平熱考えたら熱発やね」
平熱低いもんね、と背もたれ越しに頭を撫でられる。

「キツイなぁ。
 無理せんと寝とき」
まだ忙しい時期続くんやろ?と優しい姉にどこかむず痒い。

「どうする?いつもの病院に行く?」
「あそこ、小児科やん」
母の問いかけに、さすがに16で小児科は、とソファで丸くなる。

「ロキソニンかイブプロフェン、無い?」
薬箱を探る母は、病院行ってほしいけどな、と言う。

「薬飲んで下がらんかったら行く」
-なんや、どないしてん?-
不意に聞こえた父の声に、ああ、通信を繋いでいたのか、と返事はせずに目を閉じる。

「ゆうちゃんがお熱出しちゃって」
-なんや、大丈夫か?ゆうちゃん?-

母の言葉に、自分に声を掛けられていることはわかっていたが、気力無く手を挙げる。

「返事するのもつらそうや」

姉の声がどこかぼやけて聞こえ、熱い、寒い、関節が痛い、と丸くした体をより縮こませる。

ふわ、と掛けられたのは母がいつも使う大判のひざ掛け。

「重たいおふとん、嫌いでしょ?」

引っ剥がしちゃうでしょ、としっかり我が子の傾向を把握している母は、頑張ってたもんねぇ、と寝癖の残る髪を撫でた。

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