She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第29章 変化の始まり
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「-不安なことや分からないことがあったらいつでも聞いて-」
末浦の言葉に、ありがとう、と日本語で答えたテレーゼ・ロールシャッハ。
「-テリー、学校内活動中は、氷帝の制服、着る?-」
希望する留学生には、留学期間中、氷帝学園高等部の制服を貸し出していた。
「-こんな感じよ-」
全体が映るよう、立ち上がって少し下がった末浦に、カメラの画角外に逃げる。
(こんままフェードアウトしとこかな)
パソコンの脇に椅子を止めていると、ユーシ!と呼ばれる。
『-男の子は?
ユーシのスタイルも見せて-』
末浦と入れ替わるように、無言で立ち上がる。
場を持たせるように、末浦が説明をした。
「-男子は、同じ布地のパンツスタイルよ。
校則では男子がパンツ、女子がスカートと定められてる訳ではないから、女子でパンツスタイルの子もいるよ-」
「-なら、パンツスタイルにしようかしら
ねえユーシ!どうかな?-」
聞かれた侑士は、画面を見ないまま、好きにしてええと思うよ、と椅子に座る。
悩むなぁ、と考えるテレーゼに、末浦が、次回まで考えていいよ、と笑う。
それから、侑士が口を開くことはなかった。
「-また、次回のコンタクトでね-」
Tschüss!と手を振るテレサに、末浦は手を振り返したが、侑士は軽く会釈しただけだった。
「最低限すぎるでしょ」
チャットが終わり、びっくりしたわ、と言う末浦。
「ファーストコンタクトとの差、やばいって。
中等部入りたての頃の忍足、思い出した」
「人見知りなだけやわ」
「1回目に言うならわかるけどさ」
テリーが気にしてないといいけど、と言う呟きに、心どこかが少し痛む。
「けど、わかった。
おっしーはそのテンションで行くわけね」
りょーかい、と資料をまとめた末浦。
「期待はしないでよ。
あの感じじゃ、実際会ったら周り見なくなるタイプもかもしれないから」
今だけかもよ、と言われ、むう、と黙り込む。
「当日、休んでええ?」
「休んだら、忍足には脚のキレーな年上彼女がいること、バラすから」
「っなんでそないに知っとん?」
「この前、佐々と騒いでたじゃん。
『ちっこくて脚のキレーなおねーさん』だっけ?」
「言うたわ、言うたわっ」
んのぁ〜!と頭を抱えた侑士の肩を、情報は確実に広まってるよ、と末浦は軽く叩いた。
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