She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第29章 変化の始まり
数日後。
海外交流授業のセカンドコンタクトのため、コンピューター室には各クラスの海外交流委員が集められていた。
「末浦ちゃんへの一生のお願い、使わしてくれっ」
頼む!と手を合わせて頭を下げたクラスメイトは、話は聞こう、と回転椅子で足を組んだ。
「えー、角々鹿々で...」
「いや、『斯々然々』な」
さすが現代文満点!と褒め称え、要点のみを伝えた侑士に、ふむ、と末浦は顎に手を立てた。
「忍足としては迷惑な話なんだ」
「めちゃめちゃ」
「なるほど」
「むずいこと、頼まん!
ただ、末浦ちゃんが先陣で対応してほしいんよ」
あんまし関わりとぉ無いねん、と少し情けなく見える笑顔の侑士に、いいよ、と末浦は頷いた。
「その代わりっ!」
ピッ、と立てられた人さし指に、なんでもすんで!と身を乗り出す。
「経済の対策プリント、私にもくれ」
「...ガクトにやりよるやつ?」
拍子抜けた様な侑士に、そ、と頷く末浦。
「前の小テストん時、向日が『最終兵器!』ってテスト前10分で見てたんだよね。
そんなに悪くない点数だったから、聞いたら忍足に作らせた対策プリント、って言ってたから、興味あって」
「お安い御用やっ!なんやったらオマケもつける!」
1つ目クリアやっ!と珍しく躍起になっている侑士に、そしたらさあ、と末浦は身を乗り出す。
「彼女さん、見せてよ」
「え?ああ、」
ええけど、と携帯で最近の写真を漁る。
(最近、マコトしか撮ってへんな)
どれにしようか、と選んだのは、少し遠出した公園にあった薔薇が絡まるガーデンアーチの下で微笑む真珠の写真。
ふぅん、と見上げる末浦に、なん?と苦笑い。
「こういう時、大概の男は、プリクラか加工済みの写真出してくるんだけど、忍足はナチュラルなの出してきたなぁ、と思って」
「そういう写真、無いなぁ」
プリクラ撮ったことない、と返された携帯を受け取る。
忍足はさぁ、と末浦は空を見上げる。
「図書館デートとか散歩デートとかしそう」
「図書館、よお行くよ」
「散歩も、ガチの散歩。
街ぶら、とか映画ついでに、とかじゃなくて、あの公園散歩しよか、でデートが成立しそう」
「え?デート言わへんの?それ」
「なんだろう。今どきの高校生らしくはない」
そうなんか?と悩み出した侑士を他所に、デスクのパソコンにチャットの開始が通知された。
