She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第29章 変化の始まり
✜
翌朝。
いつも通り、バスを乗り換えた真珠は、うーん、と唸る。
見つめる携帯の画面は、ナレッジコミュニティサイト。
彼の背中にひっかき傷がありました。
浮気されているのでしょうか?
背中の傷が浮気...?と調べてみると、身に覚えのあるコトに行き当たり、昨夜のやりとりにため息が出る。
(『虫かなぁ?』って、私のバカッ)
本当にバカ、と自分に呆れた。
虫やとしたら、よっぽど俺のこと好きな虫やな
きっと、侑士は、傷の原因は自分だとわかってからかったのだ、とムッとする。
(ああ、そうだよっ!ゆうが大好きだよっ)
開き直ってやる、と思う反面、申し訳ない、と、自己嫌悪しているとバスが止まる。
最後に乗り込んできた侑士と目が合うと、微笑まれて顔を逸らす。
隣に来た侑士に、なあ、と手を掴まれる。
「なんでプイッてしたん?」
「なんでもないっおはよっ」
「おはようさん。えらいご機嫌斜めやな」
どないしてん?と握られる手を引き寄せられる。
「なんやあったんか?」
言うてみ、と優しい顔で覗き込んでくる侑士に、ん、と手を握り返す。
ちら、と見上げると、穏やかに頷く。
「その、背中、ごめんね...」
ああ、と微笑む。
「にくそい顔しとったから、またお母はんと喧嘩でもしたんか思うたわ」
にく、そい...?と首を傾げる真珠。
「ああ〜...憎らしいとか不機嫌そうやぁいう意味や」
「大阪の言葉?」
「マコトがわからへんなら、そやないか?
気にさせてしもうたね、堪忍な」
平気やから、と低い位置の頭に手を伸ばしかけ、バレッタで留められている髪型に手を下ろす。
「ゆう?」
「せっかくかわええ髪にしとるんに、崩した無いやろ?」
降ろされている毛先に指を通す。
「マコトん髪、綺麗やなぁ」
掬っては指先から流れ落ちていく髪。
「好きやわぁ」
どこか、うっとりとした表情で髪に触れる侑士。
「っずるい」
「ん?なんがや?」
なんでもないよ、と心地よい掌の温もりに、大人しくする。
「ゆうは、ずるいよ」
「マコトはいっつもそれ、言うなぁ」
ベッドでも言うとったな、とボソリと言った侑士の腕をパシリ、と叩く。
「痛いわぁ」
見上げた侑士は笑っていて、真珠は、いー!として、イケズッ!と言った。
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