She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第29章 変化の始まり
-背中ケガするってなかなか無いよね-
日課になりつつあるマコトとの電話をしながら、自室のベッドにうつ伏せに寝そべる。
「大した傷、ちゃうから」
-けど、沁みるほど痛かったんでしょう?-
虫かなぁ?と真剣に悩んでいる声。
「虫やとしたら、よっぽど俺のこと好きな虫やな」
-ゆうって血液型、A型?
蚊には 刺されにくいはずだけど...-
原因は虫だと思い始めている真珠に、フッ、と笑う。
「爪の鋭い虫もおったもんやなぁ」
-ええ?ダニとかじゃないよね?
なんでゆうだけなんだろ?
男性が刺されやすい虫とかいる?-
「マコトはうぶやなぁ」
-え?なに?-
なんもないよ、と側臥位に寝返る。
「たまにおるでぇ」
-そうなの?-
「せや。
傷が増えて行くほど、好かれとるいうよ」
-虫除けとか効かないのかな?-
噛み合っているようで噛み合っていない会話に、必死で笑いをこらえる。
「首に噛みついたり、背中引っ掻いたりされんねん」
-見えないところ狙ってくるって、質悪いね。
痛みが続くようなら、病院、行ったほうがいいよ-
「ある意味では、食われた方が『虫除け』になるかもな」
-抗体がつくってこと?-
そんなところやね、と返すと、部屋の扉をノックされる。
-切ろうか?-
「ええよ、多分、恵里奈やから」
電話を繋いだまま扉を開ける。
よ!と手を上げる恵里奈の手には、救急箱。
ジェスチャーで、(電話中?)と聞かれ、マコトやから、と答える。
「マコー?」
ヤッホー、と電話に向かっていう恵里奈に、スピーカーに切り替える。
-ハロー。ゆう、背中ケガしてるみたいなんだけど...-
ケガ...?とこちらを見る姉に、目を細めて首を横に振る。
「あー、さっき風呂で染みたて、泣いとったよ〜」
-そんなに深いの?-
泣いてへんっ、と否定し、心配せんでええよ、と言う。
「そうそう。『所有印』ってことで」
-ゆう、誰かのものになっちゃったの...?-
からかったらんの、と、苦笑いして、パジャマを半身脱ぐ。
「ぃいいっ!」
-ゆうっ!?-
大丈夫?と不安そうな声に返事をする余裕は無く、消毒液に悶絶する侑士に、ケラケラと笑う恵里奈。
「耐えろ〜。かっこ悪い声、聞かせんとき」
-意地悪言わないの-
枕に顔を埋めて唸る侑士の背中に、恵里奈は容赦なく消毒液をかけた。
