• テキストサイズ

She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第4章 セカンドチャンス



映画館入り口の広場。

ちょっと早いな、と時間を確認する。

約束の15分以上前時間に、本屋で時間を潰そうか、と駅ビルに戻ろうとした時だった。

階段を降りてくる人に目が止まった。

リボンタイブラウスにマーメイドラインのフィッシュテールスカート。
階段を降りきると辺りを見回すのは、真珠だった。
黒のスカートが、正面から見える脚の白さを引き立たせている。

腕時計を確認すると、柱を囲むように設置されたベンチに腰掛け、取り出した小さな手鏡で髪を整え、文庫本を取り出した。
眼鏡を掛けると、バッグを膝に置き、背筋を伸ばして姿勢で読書を始めた。

その姿を見られる位置に立ち、遠目に見つめてみる。

(マコトさんも眼鏡使うんや)

自分のは伊達だけれど、といつもの癖でその様子を観察し始める。

パラ、と頁を捲る真珠。

その姿に、侑士は、ああ、と思い出す。

(なんやったっけ?)
昔、姉と一緒に見たアニメ映画を想い出す。

(ああ、『美女と野獣』か)

読書が好きなプリンセスが出てくるやつ、と眺めていると、真珠の近くに座っていた女性がぱっと立ち上がって手を挙げた。

「おっそーい!」
「遅いって、まだ約束の時間過ぎてないし」
彼と待ち合わせだろうか、やってきた男性とやりとりをする。
「普通、女の子待たせるっ?
 15分前行動っ!」
「5分前で十分だって」

恋人を待っていたのか。
やってきた男性の腕に手を絡め、2人は歩いて行った。

ふと時計を見ると、約束の10分前。
まずった、と歩き出すと、同じ方角に向かう若い男。
一瞬目が合ったが、侑士を一瞥するとふい、と逸らす。
俯いている真珠の前に立つ。
声を掛けようかと思ったのをやめ、そっ、と真珠のサイドの髪を耳にかけた。

驚いた顔で顔を上げた真珠。

「待たせてもうた?」

少し先でこちらを様子見ていた男は、そのまま去っていく。

「びっ、くりしました」
眼鏡の向こうでまん丸になった瞳に、堪忍え、と笑い掛ける。

「声、掛けてよ」
「...ちょっと、驚かしたろかなって思て」
「もう」

いたずらしないで、と本をバッグにしまう真珠の隣に腰掛ける。

「揃いやね」

眼鏡、とオーバルの眼鏡を指す。

「本読む時だけ、使うの」
「そうやったん」

うん、と頷くと、眼鏡をはずしかけたが、いいや、と掛け直した。

/ 311ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp