She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第4章 セカンドチャンス
映画の約束の日。
(財布と、携帯...ん、充電あるな。
チケットと...
あ、イヤホンと本っと)
これでええか、と確認して私室を出ようとしたら、ノックされた。
「おんでー」
「はろー?」
顔を出したのは恵里奈。
ふーん、と侑士の頭の天辺から足先まで2回見る。
白のラウンドネックシャツに、濃茶のカラーシャツ。
濃紺のテーパードパンツの組み合わせを見て、ふむ、と言う。
「上、無し」
は?と言う侑士の部屋に入ると、自分の部屋と同じ作りのクローゼットを開ける。
「無断で開けなや」
華麗に聞き流すと、ハンガーにかかったシャツを捲る。
「これとこれに着替える」
押し付けられたのは、ワイシャツと黒のテーラードジャケット。
「ねぇ、パパにもらった時計は?」
机の引き出しを開けようとした姉を止め、プレーヤーが置かれている飾り棚の引き出しから、誕生日にもらった腕時計を取り出す。
「持ち物、最低限やで。
上映終わりもちゃんとデートして、家まで送って帰ってくるんが鉄則。
夕方にはマコを家まで送るんやで?
自分だけ楽しんだらあかんよ?マコん事優先やで?」
「...どこの仲人やねん」
アホらし、と聞き捨てつつも、シャツを変えた。
「急用って、なんやったん?」
それで行けへんねやろ?と聞くと、野暮用よ、と言って出ていった姉に、なんやねんな、とテーラードジャケットを羽織って眼鏡を掛ける。
腕時計をはめて、出掛けてくる、とリビングの母に告げて玄関に行くと、ご丁寧に通学用のローファは片付けられていて、スニーカーが一足。
履け、と言う無言の指示に、なんも言わんとこ、と素直に脚を入れ、行ってくるー、と玄関を抜けた。
(よかった、天気ええわ)
去年までの通学路と同じルートで駅に向かい、目的地までの切符を買って改札をくぐると、メッセージが飛んでくる。
-今、バスに乗りました-
真珠からの連絡に、今から電車に乗る、と伝える。
-映画館の入り口でいい?-
オッケー?と小首を傾げている小鳥のイラスト。
(気に入ってるんやなぁ)
かわええけど、とイヤホンを耳に当て、電車とバスの到着時間を調べる。
数分違いの到着時間を確認し、携帯でお気に入りの歌謡曲をまとめたリストを再生した。
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