She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第29章 変化の始まり
「ホンマや...」
あちゃー、と一限目の終わりに駆け込んだトイレの鏡の前で言う。
髪で見づらいは見づらいか、と思うが、指摘されたからか、はっきりとわかる。
「絆創膏、貼っとくか...」
いや、むしろ目立つか、と払った髪を下ろす。
せや、と開けているワイシャツの一番上のボタンを止め、ゆるいネクタイを締め直す。
(わからへんやろ)
ブレザー脱がんとこ、と、打ち合わせが行われるコンピューター室に向かう。
チャットを利用した一番最初のミーティングで、その事を指摘されることはなかった。
✜
部活終わり。
いつものように部室で、汗をかいたウエアを脱ぐ。
早くも夏日の気温。
練習でかいた汗を流そうと、タオルを手にシャワールームに向かう。
「ぃいっ!」
サァ、と頭から浴びたお湯が背に伝った瞬間、チリチリと焼けるような痛みを感じ、シャワーの当たらない壁際に逃げる。
(なんやっ!?)
「ゆーし?」
どうしたー?と戸を叩く向日に返事もできずに身悶える。
(めっちゃ痛いっ)
ジクジクと、ジリジリと痛む背中に手を回す。
肩甲骨、中部僧坊筋辺りが痛む。
(なんや?)
鏡のないシャワー室では、背後を確認できず、痛みが引くのを待つ。
「侑士〜?大丈夫かぁ?」
コンコン、とノックされる扉を薄く開く。
「ガクト、すまん。ちょい、背中見てくれ」
背中?と覗いた向日が、うわっ!と声を上げる。
「どうしたんだよっ!?
なんか、引っかき傷できてるぞっ」
ココと、ココと、と触られた所に痛みが走る。
「沁みるぞ〜これ」
「もう沁みたッ」
めっちゃ痛かった、とシャワールームの壁に手をついて俯く。
「こけたのか?」
「知らん、なんのキズやろ?」
扉を閉めて背中にシャワーが当たらないように汗を流していると、他の部員が入ってくる。
痛っとか、うっ!と声を上げながらシャワーを浴びる侑士に、なんだ?と首を傾げる。
「背中、ケガして、沁みるらしいぜ」
すげぇ傷だった、とその隣のシャワールームを使う向日。
一人が、忍足〜?と扉をノックする。
「クロルヘキシジン、ぶっかけたろか〜?」
「殺す気かっ!めちゃめちゃ痛いねんぞっ」
珍しく大声を上げた侑士に、ガチなやつだ、と笑う。
「救急箱は〜」
「やめぇて!」
慌てた声に、ケラケラと笑い声が響いた。
✜