She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第28章 水面下の企み
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鳴り響いた音に、んんっ!と唸るような声を上げて布団に潜り込む。
鳴り続ける呼び出し音に、抱き込んだ温もりが身動いだ。
「ゆう、でんわ...」
掠れた辿々しい真珠の声に、わかっとる、と音を頼りに手を伸ばす。
碌に誰からの電話かも確認せず、応対ボタンを押して耳に当てる。
-あっ出た!
ゆーし、出た!-
耳元と少し離れたところから聞こえた声に、誰や、と光る液晶を見る。
「なんや、ガクト。
こない朝早よから」
-寝ぼけてんなよっゆーし!
お前、時間見ろっ-
時間?と携帯を耳元から離す。
08:43
-今日、来ない気かよっ!?
委員会の打ち合わせ、あんだろっ?
跡部と委員会の顧問が探し回ってんぞっ-
「打ち合わせ...」
寝起きの低血圧の頭がまともに回らず、なんやったっけ、と温もりに瞼が下がりかけた時、ゆうっ!と叫んで素肌の肩を掴む真珠。
「学校っ」
「がっこ、う」
唇から漏れた音に、ガバッと起き上がる。
もう一度携帯の液晶を見ると、08:44。
「やらかしたっ!」
-え?マジ?
まさかマジで寝坊ったのか?-
通話中の携帯で、スケージュールを開くと、『海交 留学生打ち合わせ』の文字。
-マジかよっ
朝から見てねぇけどまさか休みじゃないよなって、テニス部と生徒会と委員会で、学校中探し回ってんだぞっ-
今、家?と聞かれて、あーっと、あ~...と向かいで心配そうにする真珠を見つめる。
「と、とりあえず急いで行くわ」
-だから、どこにいるんだよ?家?-
跡部が車寄越すって、と言う向日の言葉に、いやっ!と焦る。
「たっタクシー使うわっ
...30分かからんと行けるはずやから」
-家じゃねえの?どこいるんだよ?-
「後で話すっ」
支度せなから、と通話を切る。
真珠が昨晩、ハンガーに掛けておいてくれたシャツに腕を通し、ネクタイを首にかけるだけでベルトを締める。
「マコトっ
すまん、俺、もう出るよて」
部屋を出て半分叫ぶような声で言う。
「タクシー、すぐ来るって!
氷帝学園の高等部まで急ぎで、って伝えた」
2分で来る、とワイシャツの胸ポケットに差し込まれたピンク色の小さな封筒。
「ごめん。
ちゃんと起きてれば...」
「マコトのせいちゃうよ」
忘れ物、と渡された眼鏡を受け取った。
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