She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第28章 水面下の企み
夜の静かな時間。
少し課題していい?とパソコンに向き合っている真珠。
向かいでいつも持ち歩く小説を読んでいた侑士だったが、構われたさに、なあ、と、声を掛ける。
「なに?」
手を止めてこちらを向いた真珠。
本を閉じ、いそいそと肩が触れ合う程の隣にピタリと座る。
見上げる真珠の前髪を払った額にキスをして、外した眼鏡を卓の本の上に置く。
「度が入ってないのに、本読む時はかけるんだね」
「クセみたいなもんや」
「ん、」
塞ぐ唇で軽く吸うと、シャツを掴む手を握る。
濡れた唇を白い首筋に寄せる。
「真珠、」
力が入り、硬直する体を、優しく撫でる。
滑らかな首筋の肌に押し当てた唇をゆっくりと這わせる。
「ぁ...」
震える声に、鎖骨のあたりに吸い付いて、ゆっくり身を離す。
「ゆ、ぅ」
そ、と伸ばした指先が頬に触れると、ビクッ、と真珠は、身を引いた。
「あかんな」
堪忍な、と笑って額に一つ、キスをして立ち上がった。
「ちゃんと戸締り、しいや」
「ゆう、」
伸ばされた真珠の手から逃れる。
「あかんよ」
来んとって、と、翳される手と逸らされた顔。
「あかんから」
机の本と眼鏡に伸びた侑士の手を掴む。
「ゆう、」
「マコト、」
「帰っちゃ、ダメ」
ダメ、と腕に縋るように抱きつく。
「せやけど、」
「もう、こわくないよ」
ゆっくりと立ちがり、腕に額を当て、指を絡めて手を握る。
「無理、してへん?」
「してへんよ」
口調を真似して侑士を見上げ、その目をしっかりと見て、微笑んだ。
「ゆうは、優しいけど、優しすぎ」
「どういうことやねん」
片手で覆えてしまえそうな真珠の頭を撫でる。
「わがまま言ってよ」
「充分、言うとるよ」
少し乾いた指先で触れる、柔らかな頬の感触を確かめる。
「一人ってわかってる家に連れてきた時点で察して」
誂うような目線で、ね?と見上げる真珠に、敵わんなぁ、と溜息をつき、抱き寄せた肩に額をつける。
「ちぃと、散歩行かへん?」
「散歩?」
ジャスミンの香りがする髪に口付け、耳元に唇を寄せる。
「冷静ならんと、自分こと、壊してまいそうや」
デートしよや、と言う侑士の提案の半分は真珠にまだ選択肢を与えたかったことよりも、自分のため、と言う事のほうが意味合いは強かった。
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