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She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第27章 嵐の前触れ



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氷高祭の準備が整いつつある校舎内は、色とりどりに飾り立てられたり、段ボールで目隠しがされて、いつもの机や椅子が押し込まれている。

留学生の待機室も兼ねる生徒会室には、さっきまで各クラスの海外交流委員が集まっていたが、真っ赤だった空が濃紺に変わる今、生徒会長の跡部と侑士だけが残っていた。

打ち合わせの片付けをする侑士に、生徒会長席のソファチェアに座る跡部が声をかけた。

「マトコとは、結婚する気は無いのか」
「.....は?」

え?結婚...?と侑士の頭の上にハテナが飛び回る。

「藪から棒すぎるやろ」
「どうなんだ」
「どうもなんも、まだ1年も経っとらん」
「付き合いの期間なんざ、関係ねぇだろ」

いや、あるやろ、と資料を手に、跡部が座る席の机の端に軽く掛ける。

「海外交流委員の割り振り、何も思わなかったのか」
「割り振り?」
跡部の言葉に、ああ、と言う。

「主が俺やのに、割り振られたんが女ん子やったことか?
 単純に、数の問題ちゃんうん?」
「それならば、慣れている3年にやらせるべきだと思わなかったのか」
言われてみれば、と空を見上げる侑士。

「そんなことすら気にしてなかった、ってことか」

ちょお待て、と振り返る。

「わざとやったんか...?」
「『あちら様』の希望だ」
「どういう意味や?」
「名前で分からなかったか?」
「名前?」
確か、と、呟く。
「テレーゼ・ロールシャッハ?」
「お前なら、気付くはずだと思ったが」
「ああ、やっぱ、イヴァン・ロールシャッハの血族なんか?」
気づいてたんじゃねぇか、と言う跡部。

「なんや?
 話の意図が読めへんで?」
「父親から何も聞いてないのか?」
「なして、オトンが出てくんねん」
「お前、父親がいる場所、忘れてるわけじゃねぇだろ」
オトンのおる場所?と考える侑士。
「局長の名前、知らないのか?」
「キョクチョー?」

あれ?と引っかかり、携帯を取り出す。
確か、と現在、父が籍を置くドイツの医療研究機関を検索する。
研究所局長 ギルベルト・ロールシャッハの名前を見つけ、眉根を寄せる侑士。

「彼女は日本の就学制度で言えば、高校3年生の18歳。
 ドイツも、男女関係なく18歳になれば婚姻手続きができる」

前触れもなく告げる跡部の言葉に、真意が汲み取れないほど、侑士も疎くは無かった。

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