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She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第27章 嵐の前触れ



「平日やったら、もうちょい人少ないんやろうけど」
「ラッシュは避けたいね」

休日で混み合う車内で、微かな声で話す侑士は、向かいの真珠を引き寄せ、扉横の僅かな隙間に入り込む。
座席の枠の上部に掴まり、壁際に真珠を隠すように立った。

つ、と侑士のシャツの裾を掴む真珠の指先。

「どないした?」
なんでもない、と顔を見上げて微笑む。

「なんや、えらい嬉しそうやん」
「そう?」
ぽん、と頭を撫でる手に、ふふ、と微笑んだ。

 ✜

目的地の最寄り駅で降り、出口を探す。

「あっちなら、車両は後方が良さそう」
やな、と計画の端に書き込む。
「直結じゃないから、登って、改札出て、地上を建物沿いに、かな」
それで行こか、と階段を登る。

「なにかおもしろいもの、無いかなぁ」
ドイツに無さそうなもの、と辺りを見渡しながら歩く真珠。

「『ドイツパン』...ドイツってパン食?」
パン屋に立てられた幟を指す。
「せやね。
 小麦のパンより、ライ麦のパンが主流や。
 ライ麦の割合が多いもんから、ロッゲンブロート、ロッゲンミッシュブロート、ミッシュブロート、ヴァイツェンミッシュブロート、ヴァイツェンブロートて、呼び分けるね。
 あと有名なんは、プレッツェル」
「チョコ無しのしょっぱいポッ◯ー?」

うん?としばらく考えた侑士。

「それはプ◯ッツやん」
あれ?と本気で分かっていない様子の真珠に、くくっ、と笑う。

「ハート型っぽい、編んだようなやつや」
うーん?と首を傾げた真珠は、あっ!と勘違いに気付いたようで、忘れてくださいっと照れ笑った。

「日本のパン屋さんとは、種類が違う?」
「向こうから言わせたら、日本のパンは、『クーヘン』とか『トルテ』とか言う、お菓子に近い感じやろね」
「『バウムクーヘン』とか『ザッハトルテ』とかの?」
「せやね。
 そう考えたら、日本式のパン作るんも、おもろいかもな」

料理の候補にしとくか、とパン屋の前を通る。

「プ◯ッツ作てもええけど」
「お忘れくださいっ!」
「小麦粉、バターと卵で練って細ぉ切って焼けば、それらしいもん、できそうやない?」
「いじわる、しないっ」

ムッ、と睨んでいるつもりなのだろうが、なんの威圧もない目線に、堪忍な、と笑って髪を撫でた。

 ✜

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